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2018-03-27

伝統文化の再産業化に長良川からチャレンジする【しごとバー@名古屋「長良川の手仕事 和傘ナイト」開催レポート】


ごとバー名古屋 長良川の手仕事 和傘ナイト

しごとバー@名古屋は、さまざまな働き方、生き方をしている方をバーテンダーとして迎え、”はたらくこと”について楽しくお酒を飲みながら語るイベントです。日本仕事百貨さんが東京で開催しているしごとバーの名古屋版。NPO法人G-netさんと大ナゴヤ大学はたらく課の2団体が恊働で企画・運営しています。

2月21日(水)に開催されたしごとバー@名古屋「長良川の手仕事 和傘ナイト」の開催レポートをお届けします。ゲストは、長良川流域の持続可能な地域づくりをしているNPO法人ORGAN 理事長の蒲勇介さん、長良川デパート湊町店 店長の河口郁美さん、岐阜和傘職人の高橋美紀さん(高橋和傘店)、河合幹子さん(傘日和)、「和傘の骨」職人の多和寛さん。

長良川流域の歴史、岐阜和傘の産業としての発展について説明がありました。現在、世界無形文化遺産に指定されている美濃和紙は正倉院宝物に収蔵されている書物の紙として利用され、また美濃は尾張藩の直轄領であり、長良川の水運を経由して和紙や木曽の材木が運ばれたそう。

【しごとバー@名古屋「長良川の手仕事 和傘ナイト」開催レポート】

輪中地域に岐阜が立地していて、竹が豊富で、えごま油や竹の骨をつなぐ「ろくろ」と呼ばれる部品の原料である「エゴノキ」が調達出来たことが要因となり岐阜で和傘産業が発展。長良川周辺の自然の恵みがこの産業を支えてきました。

岐阜和傘は江戸時代後期に加納藩主が奨励したことに始まり、戦前の全盛期には1500万本も生産され、岐阜市民の四分の一が関係するほどの一大産業になっていました。

現在は洋傘・ビニール傘の大量生産化による機能性、安価化により、和傘業界は消滅の危機にあります。日本各地に和傘職人は点在していますが、原料を地域で調達し職人が製造するシステムが残っているのは岐阜だけだそうです。岐阜和傘などの伝統産業を遺すためには人々にその存在を認識してもらうことが重要ですね…。

和傘

NPO法人ORGANは「長良川デパート 湊町店」を開店し、美濃和紙を使用したアクセサリーや岐阜和傘などを販売する場をつくっています。そして、古民家を改装し、職人さんの技を直接見ることが出来たり、観光客の方々に和傘づくりを体験したり、伝統工芸品のショールームとして活用する「長良川CASA」をオープン予定。現在、クラウドファンディングに挑戦中!

和傘は生産地が少なく、金沢など各地で生産は続けられてはいますが、ごくわずか。今でも、神社での神事、歌舞伎などの伝統芸能に使用されているものの、洋傘が普及し、和傘は小売や流通に安く買い叩かれる。

このままでは将来、和傘づくりは継承不可能になってしまう。職人さんたちの生活、結婚などを視野に入れた事業設計が出来ないと絶対続けられない。「長良川デパート」で和傘を一年で100本販売。確実に買ってくれる人が存在するということを短期的に証明できた。

長良川の手仕事 和傘ナイト

そういう価値観の人を呼びこむ必要があり、伝統芸能文化に関わっている人々にこの価格でないと売れないということを理解してもらう。このようなコミュニケーションをとる必要がある。職人の地位向上をしないとこれ以上生産数が増えず、大量注文が行われた時には対応できない。職人にチャレンジする人が出て来れる産業にしなくてはいけない。再産業化が必要。

「長良川CASA」で反撃の狼煙(のろし)をあげたい!蒲さんはそうおっしゃっていました。伝統を将来絶やしてはいけない、という熱い思いが伝わってきました。

長良川デパートで和傘などを販売する河口さん、和傘坂井田永吉本店の姪にあたり、柄物の和傘を主に作っていらっしゃる河合さん、子育てと両立しながら傘を作っている和傘職人の高橋さん、和傘の竹骨や「ろくろ」と呼ばれる部分を作っていらっしゃる多和さん。全国の生産地に骨を作る人は高齢化していて、多和さんはこの業界では貴重な存在だそうです。この後、後半は交流の時間となりました。

長良川の手仕事 和傘ナイト

今回は、特別に和傘を手に取って見ることが出来るスペースをつくりました。そこで河口さん、蒲さんが和傘の良さを熱弁。みなさん熱心に説明を聞かれていました。

高橋さん、河合さん、多和さんも会場で色々と職人になったきっかけ、苦労話などを話してくださいました。全体として参加者の皆さんは岐阜と接点があったり、伝統文化に興味を持っている方が多くいらっしゃった印象がします。

伝統文化の継承のために色々な人々が尽力する姿に心打たれました。また価値あるものに触れることで新たなことを知る大切さ。そしてそれにお金を投じること意味。そんなことを考えさせられたしごとバー@名古屋でした。

文:進藤 雄太朗(大ナゴヤ大学 インターン生)