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2012-11-09

お店をやるということ〜第4回 はたらくインタビュー【『ハタラクデアイ』公開インタビュー】〜


ハタラクデアイインタビュー記事

はたらく課では初の試みとして、仕事帰りに、雰囲気のいいお店で、軽く飲食をしながら、ゆったりとした雰囲気のなかで「はたらく」について考えてみようというトークイベント「ハタラクデアイ」を開催しました!
今回は、東海地区で地域に暮らす方たちとダイレクトに繋がるお仕事をしている、株式会社TFL(ティーエフエル)の武山匡哉さん、case study shop(ケーススタディショップ)の小木曽孝行さん、cafe duri(カフェ ドュリ)の藤村隆司さんをお招きし、普段のお仕事内容や、働き方、また生き方など、普段聞くことのできない”はたらく”についてお伺いしました。

三人のプロフィールはこちら


—皆さん自分でお店をやるという選択をされたわけですけが、そのきっかけと組織に入って働くということを選ばなかった理由をお聞きしたいです。

武山さん:アメリカの大学に入って、日本の大学に編入して、それからお店を始めたので、組織に入ったことはありません。僕は雇われたことがないので、社員の本当の悩みとか分からないことがあるんですよ。そこが自分の弱点になっていて、今、苦労して組織づくりをしています。

小木曽さん:以前とあるインテリアショップで家具の販売をやっていたので組織で働く経験はあって、その前にも何回か仕事をかわっています。理由は単純なんです。どんなことがあっても全部自分で思ったとおりにやって、責任は全部自分で負いたい。そういう気持ちがあって、だから、組織に属するのではなくて、自分でやってみたいという思いではじめました。

藤村さん:大学を出て始めに飲食店で働きました。次になにをやりたいかなって思ったときに営業をやってみたいということでUCCに入り、喫茶店などのルートセールスを行っていました。興味本位で動くタイプなので、今度は法人営業をしたいなって思い、リクルートで働くことになりました。次は海外に住みたい、とカナダに行き、2年ほど飲食店で働いて日本に帰ってきました。
それから再びリクルートに戻り、今度は保険を知りたいと思い保険会社で働いて、その次にはお客さんの不動産の人に誘われて、不動産で働くことにしました。もう組織では充分やってきたので、そろそろ自分でもやってみたいなと思ってやったというだけで、本当に経験を積みたいなっていうだけですね、僕の人生は。そんなに難しく考えないでいいんじゃないかなっていう感じなので安定性はないですけど。


—それぞれ地域に暮らす方たちと直接関わるお仕事をされていますが、はたらく上で、人とのつながりをどう感じていますか?

武山さん:やっぱり人が一番大切だと思って商売をやっています。
例えば宅配便など荷物を運んでくれる人だって、実は大事な人たちなんです。もしあなたの店には配達しませんよ、といわれたら本当に流通が止まっちゃう。店をつくるというのは全ての人に支えられていることなので、店を始めて19年のあいだ、ここまでやってこれたのは本当に人のおかげだな、というひたすら感謝の気持ちで毎日仕事をしています。


—ありがとうございます。小木曽さんはどうですか?

小木曽さん:やっぱり人は大切だと思います。例えば、世の中には同じものが流通していて、どこでも買えると思うんです。うちの場合も、どうしてもメーカー品が入ってきます。そのなかのどこで買うかということが重要なことだと思っています。いろいろ判断基準はあって、例えばインターネットだと価格検索ができますし。
でもやっぱり重要なのは、その人だから、ここだから信用できる、とお客さんに信頼してもらったうえで買い物をしてもらうことだと思うんです。売って終わり、買って終わりじゃなくて、その後も関係が続いていければいいなと思います。


—まだお店を始めて間もないと思うのですが、藤村さんはどうですか?

藤村さん:お店をつくれたのは、人とのつながりが120%くらいです。僕は手をあげて「こういう思いでやりたい」って言っただけで、30人ぐらいの友達や、知らない人も協力してくれた。それがなかったらお店をつくることはできなかったと思います。飲食店ってマニュアル化されたサービスが多いと思うんですけど、そういうのはあまり好きではありません。コーヒー1杯頼むのでもコミュニケーションだと思うので、常連さんが増えてきた今、コーヒーだけではなく、そこに一言添えたりとか、プラスになにかを提供したりとか、気に入ってくれたりとか、そこからつながることが多いんです。

僕は海外好きで、話をしていると引き寄せの法則じゃないですけど、なぜか海外でこういう経験をしていた、ボランティアしていた、というお客さんが集まってきました。そうやってどんどん発信することでお客さん同士がつながったりするし、うちのお店を好きになっていただいたりもしています。今後はただの接客より、もう一歩先をという姿勢が必要となってくるのではないかと実感しています。


—30人もの人達が関わってくれたとは凄いですね!なぜそんなに人が集まってくるのですか?

藤村さん:本当になんでなのか分からないんですよ(笑)友達が友達を連れてきてくれるんです。以前、友達がお花屋さんを連れてきてくれたことがありました。アドバイスを受けられるのかと思っていたら、実は彼は営業をしにきていて、「これがこういう内容だと、これだけかかるよ」って。え?僕お金払うの?と思ってしまって、お金ないよと言いました(笑)
そこから仕事の話じゃなくプライベートの話などをしていていたら、「なにかあったら手伝うよ」って言ってくれて、そしたら1日中手伝ってくれたり、お店の要になってくれたり・・・。そういう方が増えてきたっていう感じです。本当になんで集まってきたの?って、その理由を僕も教えていただきたいくらいです。


    

—以前武山さんとお話させていただいたときに、お店を出すときには、挨拶しに行くという話をされていましたよね。そういった面で地域の人達とのつながりで何を大事にしていますか?

武山さん:やんちゃな男だったので昔は考えたことなんてなかったんです。栄の5丁目のビルが本社なんですけど、2004年にご縁があって買うことができました。その時に、これまで10年以上やってきて本拠地も持ったし、ここで気持ちを入れ替えなければ、というスイッチが入ったんです。店を持てたっていうのは街があってこそで、店をつくるというのは、主体的な行動なんですけど、実はその街の人たちが許してくれているという部分もあると思うんですよね。僕はそう感じました。

そこで、まず「武山匡哉という人間がここで商売を始めます」ということを近所に知ってもらうことが重要だと思い、「武山匡哉です。」と挨拶回りをしました。挨拶ができないと、なかなか見知らぬ人の心の中まで入れません。だから、挨拶は基本だなって思います。

あとは掃除ですね。向こう三軒両隣は今でも毎朝掃除しています。うちの近所、おじいちゃんやおばあちゃんとかが多く掃除できない人もいらっしゃるので、「ありがとね」って言ってもらえます。あんたら来てよかったわ、と。受け入れてもらえると、そこから良いつながりが生まれてくると思いますね。


-小木曽さんは、インターネットで何でも買える時代の中、ミッドセンチュリーデザインと言えども新品の商品も販売してますよね。その状況の中、信頼関係を築くために具体的にやっていることや、気をつけていることはありますか

小木曽さん:雑談、クレーム、どんな小さなことでも、この人には言いやすいと思ってもらえるようにしようとしています。とにかく私は何でも聞く、どんな話でも聞く、というスタンスを守っています。そうすれば、お客さんもいろいろ聞きやすくなりますし、いつもだったらスルーしてしまうような商品の仕様も、お店に来たりメールなどで説明することができるので、話かけやすい人でいようとしています。

-その姿勢は、どの仕事でも大切にしたいですね。先程、自分で責任を負いたいとおっしゃっていましたが、お客さんからのクレームなどはどうしていますか?

小木曽さん:私の店では、完全に納得して商品を購入してもらっています。小さな店なので、来店する人はそこまで多くないんですよ。なので、1人1人の話す時間は、他のインテリアショップより長いんです。だから例えば不具合があったとしても、それはそういうものだと完璧に理解したうえで買ってもらっているので、クレームも返品もないし、後からクレームになることもないです。


-クレームがないとは驚きです。例えば、いきなり「何かお伺いできることがありますか?」と言われると買い物がしづらくなってしまう人もいると思うのですか、そういうお客さんをどう思われますか?

小木曽さん:その気持ちは私もとても分かります。なにか聞かれると自分もそう思ってしまうタイプなので。あれは何で嫌と思うのかというと、言わなきゃいけないから言っているんだというのが伝わってくるからだと思います。しかし、お客さんがお店でそう感じるのは、言わなきゃいけないから私は言っているんですっていうマニュアルみたいなものだと感じ取っているからなんです。だからこそ壁を感じると思うんです。私のお店では、中が狭く、無言でいるのも息苦しいので声かけることはもちろんあります。でも、これは私が本心で言っているというのがあるんですよ。本心の気持ちで接する人であれば、声をかけてくれて良かったなっていう気持ちになるんじゃないかなと思うんですよね。なので、その人の心構えであったりスタンスだと思います。

武山さん:ナイスな質問ですね!対面販売は江戸時代からずっと続いている商売のスタイルなので、お客さんも楽しんでほしいなっていうのがあって、例えば、暑い日にお客さんがみえると、「暑い中ありがとうございます。」って言うんですよね。


-そういう違うところから入ってくれるといいんですけど、だいたいお店は形式的に「お伺いできることはありますか。」とか決まり文句ですよね。

-武山さん:そうですよね、「何かお探しですか。」とかですよね。そしたら下手な接客だね、とパチンとやってあげてください。まだ慣れていない人だと思うので(笑)これから一番重要になってくるのが、知識とかスキルとかじゃなくて、人の心に届けられるものを持ててるかどうかだと思うんです。なので、そういう気持ちを持ってほしいと思いますね。


-そうなんですよ。必要なことがきちんと満たされる、顧客満足を行われている店を探しています。

武山さん:そうですよね。僕は、社員にライフクオリティを向上してほしい。例えば、お客さんが格好良い服を着て、友達に会ったときにその服格好良いねと言われたり、ちょっとモテちゃったりすると良いと思っています。買い物というのはモノじゃないから。やっぱりその付加価値が重要かなと思うので、クリックじゃなくて、どんどん街に出て買い物をお願いします!


    

-そうなれば街も盛り上がりますね。話は変わりますが、皆さんお店をやる上で大変なことがあったと思うのですが、何が成功で何が失敗だと捉えていますか?

武山さん:お店を2,3軒も潰したこともありますしピンチは何回もあるんですけど、失敗は糧だと思っています。失敗するとダメだとか落ちちゃう人がいっぱいいるんですけど、商売やっていれば毎日失敗はあります。小木曽くんのところはクレームがないって言いましたけど、僕のところはクレームいっぱいあります。でも、クレームっていうのは応援歌みたいなもので、いい会社になれよって言ってくれているようなものだと思っているんです。それを乗り越えれば、いいお客さんになってくださると思っています。


-クレームも乗り越えれば、信頼関係につながっていきますよね。小木曽さんはどうですか?

小木曽さん:成功に関しては、ここが到達点、これをしたら成功、ということはないです。失敗については、武山さんと同じで、失敗して終わりってことはないと思うんです。失敗したからこそ、うまくいくこともあると思うんですけど、まだお店を始めて1年ちょっとなので、お店を潰したことはないですし、なるべくなら失敗はしたくないと思っています。仮に失敗という状況になったとしても、別にそれはそれで、次につなげていくだけなので、失敗はつまずくことでもなんでもないと思っています。


-まさに失敗は成功のもとですね。藤村さんはお店を始める前に仕事を変えられてるのですが、その中で成功と失敗と思えることはありますか?

藤村さん:僕はお店を始める前に5つぐらい仕事を変えています。失敗というより経験値とみなしているので、まだやっていない仕事を次やろうということで転職を繰り返したんですね。そのなかで自分のやりたいことを見つければいいという考えです。人生は人生ゲームと同じだと解釈しているので、とんとん拍子でいくゲームなんて面白くない。飛び込んで、そこで成長すればいいし、失敗してそれを乗り越えて成長すればいいと思ってずっとやってきて、結果、すべてが点で繋がっていると思います。
僕もまだ30で若いので、もうどうしようというくらい凹むんですね。そこで思うのは、ここで降りてしまったら僕が支援している子供たちはどうなるんだろうということです。彼らはご飯も食べれないし、学校も行けないし、明日生きていくことさえできないかもしれない。でも僕がここで踏ん張ったら、彼らにまた月々いくら払えて、学校にいけて、普通に成長ができる、こういうことを高校時代から考えていて、それがあると何でも頑張れちゃうかなと思っています。だって普通に3食たべられるし、布団に入って寝られるし、そう思うと幸せだなぁと思う。ぼくより辛い人たくさんいるんだっていう考えだから、失敗も成功も経験できるだけ幸せでしょうっていう感じです。


-ありがとうございます。その考え方は、非常に大事ですね。それでは最後に、これは「はたらく課」で聞いていることなんですが、皆さんにとって、“はたらく”とはなんですか?

小木曽さん:すごく考えたんですけど、私にとって働くとは、自己表現だと思ったんです。ただ自己表現といい切ってしまうと自分のためだけっていう感じがするんですけど、そんなつもりはなくて、人それぞれの働くというのはそれぞれの自己表現で、いろんな仕事や働き方があるなかで仕事に就いていると思います。自分はこういう人なんだよということが働き方によって言えると思うんです。例えば、僕だとお店やっていますしね。だから働くとは、その人を特徴付ける自己表現だと思います。

藤村さん:働くとは経験値をつむことなのかなぁと。今こういうことをしていますけど、また他に興味があったらたぶんそれをしますし、40歳や50歳になったときにどうなっているか分からないので、その時にやりたいことをするという感じです。ただお金のためにするのか、自分のやりたいことをするのか、最終的に死ぬときに自分の人生幸せだったなと思えればいいんで、その時やりたいことをやればいいかなって感じです。

武山さん:人生かなって思うんですけど、働いてお金もいただいてそれで生活してるんで、とても感謝しています。働けるということは感謝だなっていう気持ちです。


    

——-働きながら“はたらく理由”を考えている人なんていないと思っていた。でも、実際には多くの人たちが考えていた。

“はたらく理由”は人それぞれあるけれど共有する機会はあまりなくて、だからこそ、このようなイベントに参加し、一度立ち止まって考えてみるのはとても大事なことだと感じた。

まだ働いたことのない私にとって、実際に働いている人の話はとても興味深く、来年から“はたらく”ことになる自分に、いま少しわくわくしている。——-


取材日:2012年8月03日/取材者:小林俊介/写真:安藤 倫子/記事:佐久間一輝(大ナゴヤ大学 インターン生)