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2024-03-08

地域企業に新しい雇用の可能性を提案!「就労」で精神障害者と社会をつなぐ |一般社団法人しん


※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「あれもやらなきゃ。これもやらなきゃ……。誰か手伝ってくれないかなぁ……」

こんなような言葉、誰しも一度はつぶやいたことがあるではないでしょうか。「ひとりでもなんとかやりきれる」と思って自分を奮い立たせても、「やるべきこと」をたくさん抱えている状況はやっぱり落ち着かないもの。手を差し伸べてくれる人がいたら、すごく心強いと思います。

企業など大きな枠組みでも同じように、「少しでも手を貸してくれる人がいたら……」と願うこともあるでしょう。ただ企業の場合、報酬の兼ね合いなどもあるため、気軽に「手を貸して」と言えないのが難しいところです。「手は足りていないのだけれど、現状の体制でも対応できないわけじゃない。でも、細々とした業務が負担になっていて新しいことにも挑戦しづらい」——こんなジレンマに頭を抱える経営者も、少なくないのでは。

「いろんな人が、その人に合うかたちで働くことで企業に少しでも貢献できたら、企業にとってもありがたいことでしょうし、働く人も『力になれた』とうれしくなる。うれしいと思う人や企業が増えていったら、きっと社会全体も良くなっていくと思うんです」

そう話すのは、「精神障害のある人の多様な社会との『つながり』を応援する」ことを理念に掲げる一般社団法人しん(以下、「しん」)代表の本間貴宣さんと、副代表理事の中山ちはるさん。本間さんは臨床心理士、中山さんは看護師の資格を持ち、医療機関で精神科医療に従事していたおふたりは、2012年に仲間とともに「しん」を設立しました。

「しん」では現在、生活訓練を行う「地域自立支援センター みち」をはじめ、地域活動支援センターや相談支援事業所、利用者に働く場を提供する就労継続支援B型などの運営、ボランティア活動やリカバリーカレッジ、精神障害者家族会など自主事業を展開しています。

「しん」を取り巻く人も、非常にさまざまです。利用者さんの年齢はおおむね18歳以上で、精神障害や発達障害があり、何らかの支援を必要としている方。他にも精神障害のある人の家族や友人、あるいは精神障害に対する理解を深めたい人なども、ボランティアなど何らかの形で「しん」の取り組みに関わっています。職員さんの中には、過去に事業所を利用していた方もいるそうです。

現段階でも事業展開が多岐にわたっていると感じますが、2024年から新たな事業をスタートさせる予定なのだとか。新規事業で取り組むのは、企業が抱える課題やお悩みを整理し、人材を紹介すること。今回、この新規事業を担う人材を募ることになりました。併せて、多くの事業を抱える「しん」の事務関連の業務を任せられる人も募集します。

今回の募集、特に新規事業について理解を深めるために、まずは「しん」のこれまでの歩みについておふたりに聞いてみました。

「しん」設立の背景には、日本の精神科医療の実態を目の当たりにする中で本間さんと中山さんが抱いた、ひとつの「問い」が深く関わっていたといいます。

それは、「精神障害の人にとって、何が障害されているのか?」ということ。

「人や社会とのつながりを失っている状態が、精神障害における『障害』だと私たちは考えました」と話す中山さん。本間さんも「どの事業も、精神障害のある人と社会とのつながりを生むためのアクション」と続けます。

ふたりが強く意識する「社会とのつながり」。これをより深く理解するために、日本の精神科医療の現状を簡単に紹介します。

精神科や心療内科を標榜するクリニックがあるなど、治療・ケアは通院で行うものというイメージがありますが、実際には日本の精神科医療は入院治療が中心とされています。入院期間が長期におよんだり入退院を繰り返したりすることも珍しくなく、多くの患者が社会から隔絶された環境に置かれ、社会復帰が困難になっているとの指摘もあります。

「社会からの隔絶」「社会復帰が困難」——。
精神障害のある人の存在を実感しにくいのは、隔絶された場所に集められてしまっているから。そう思うと胸がギュッと締め付けられます。事故や病気の後遺症で身体障害を抱えるように、精神障害だって誰にだって起こりうるものなのに。

本間さんは「個人的な意見になりますが」と前置きした上で、「精神障害は、社会とマイノリティーとの葛藤の間に生じる現象」と言い表します。

「異なる人を排除したり選り分けたり……精神障害が生まれたのは、現代の社会構造のひずみによるものだと考えます。ならば、その解決のために社会自体にアプローチして新しい価値を創造していく必要があるんです」

さまざまな事業を展開してきたことで、居場所ができたと感じ安心する利用者さんも増えたと思うと、すごく意義のある活動だと感じます。しかし本間さんは歯がゆそうに「僕らの支援だけで解決できる問題ってすごく限られているんです」と言います。中山さんも、真剣な表情でうなずきます。

「実際のところ、うちの事業所と自宅の往復ばかり、という利用者さんも少なくないんです。なぜなら、他に居場所がないから。社会とのつながりをつくるためには、僕らの事業所の中を豊かにしているだけじゃ、根本的な解決にはなりません」

利用者さんが関わる「社会」をもっと広げるためにどうしたらいいのか。考えをめぐらす中で、本間さんたちが注目したのが「働くこと」でした。企業などでの就労をきっかけに、家庭や事業所といった「慣れ親しんだ場所」から一歩踏み出し、新たなつながりをつくっていってほしい、と考えたのです。

しかし、次のような課題もあります。

  • 日本の「障害者雇用率制度」において、障害者雇用率算定対象となるには、少なくとも労働時間が「週20時間以上」であることが条件となる(※1)。
  • 精神障害のある人にとって「週20時間以上」のハードルは高く、多くが短時間での労働を望んでいる。しかし企業側からすると算定条件を満たさないため、現状では希望をかなえるのは難しい。
  • 一方で最近では法改正が進み、これまで算定対象とされなかった「週10時間以上20時間未満」で働く一部の障害者も算定対象に(※2)。この動きと併せて「超短時間雇用」という就労モデルも新たに登場。労働者は最短1日15分、週20時間未満の労働で報酬を得ることが可能になるとされている。

新算定の施行予定は2024年4月1日。この流れを受けて、「超短時間雇用」を障害者就労支援など社会福祉の領域で活用・展開するプロジェクトを立ち上げる自治体が登場しています(※3)。

[参考]
※1 障害者雇用のルール|厚生労働省
※2 改正障害者雇用促進法の施行日と施行内容は?超短時間労働者の算定方法、新設助成金など | 障がい者としごとマガジン
※3 神戸市:超短時間雇用創出プロジェクト

障害者の就労の機会を得る可能性が広がることが期待される反面、気になることもあります。具体的に「短い時間で任せられる業務」を洗い出せる企業は、現状あまり多くないのでは……?

「だから、超短時間労働の機会を増やすためにも、まずは企業の現状と課題を整理できる人が必要なんです。けれど、私たちは企業の課題解決などはまったくの専門外で……」と中山さん。なるほど、だからそれに長けている人を募ろう、となったわけですね。

新規事業での仕事の流れを想像してみましょう……例えば、発送作業に課題を抱えている商品の卸売り企業の場合。取引先からの注文の数は日によってまちまちで、注文が重なると残業が発生することもあります。取引先が増えて業績が上がる一方、社員の業務負担が大きくなってしまっている、と仮定します。

課題を解決するために、まずは業務のフローをより細かく明文化して、ボトルネックとなっている工程を洗い出します。次に、特に人手が足りていない工程をピックアップし、「商品の梱包作業には、こんな人材がご紹介できます」といった感じで、人手を補うと良い工程に適した人材を提案する、みたいなことを担ってもらう感じかと思います。

想像の域を超えないものの、企業の状態を俯瞰で観察し整理する力や、顧客の要望を踏まえて「超短時間で人を雇ってみては?」と魅力的に提案できる力が求められると感じました。加えて、実際にはこんなにもスムーズに企業の課題を整理できることは珍しいでしょうから、悩みを抱える経営者の心情を汲み取れる共感力や、コミュニケーション力も必要になってくると思います。

「地域の中小企業などとコミュニケーションを通してつながって、課題解決に向き合える、社会をより良くしていこうって視点を持っている人とご一緒したいですね」

求める人物像について、本間さんは「精神障害の人を『助けてあげたい』ってスタンスの人は、いりません」ときっぱりと口にします。

「少しキツい言い方かもしれませんが、精神障害のある人が苦しい思いをするような、いびつな社会をつくってしまったのは、僕ら健常者といわれる人たちです。当事者である側が、助けるって発想は違う。社会は、誰かがつくってくれるものではありません。自分自身も社会を形づくるひとりとして自覚して行動してもらえたらって思います」

本間さんの言葉を聞いて、障害の有無、あるいは肩書き、年齢、性別、経歴など、人をラベリングするものを取っぱらって、相手を真っ直ぐに捉えられる人が「しん」では活躍できるのではと感じました。

ただただ、その場にいる人をそのまま捉える。簡単なようで、実は難しいことです。それを意識せずできる人は、きっと「しん」で活躍できるはず。事務関連の業務を任せる人にも、仕事内容は異なるとはいえ同じ姿勢、心持ちが求められると感じました。

募集の背景などがしっかりと聞けたところで、改めて事業所の利用者さんについて知りたくなってきました。お話を聞いたのは伊藤美佳さん。ご家族が精神的に苦しい日々を送るようになったのをきっかけに、家族としての関わり方、手助けの在り方を学ぶようになった伊藤さんは、資格取得を機に「しん」の職員として働くことになりました。

伊藤さんいわく、「本間さんは真面目な部分と砕けた部分のバランスが抜群で、中山さんはすごくメンバー思いで芯の強い方。まったく違うタイプなのでふたりともメンバーから絶対的に信頼されています。ふたりの組み合わせが絶妙」なのだそうです。そんな伊藤さんの言葉におふたりも照れ笑いをうかべます。

伊藤さんが従事するのは、生活訓練事業所での利用者さんの支援。生活支援には『集団支援』と『個人支援』があり、例えば個人支援の場合、その方が設定した目標を、2年間を期限に達成までサポートするそうです。定める目標は「ひとり暮らしを始めたい」など人それぞれで、伊藤さんをはじめ職員の皆さんはその一つひとつの目標に寄り添い、達成を支えています。

「利用者さんは、希望を失っている、お先真っ暗と思い込んでいる人がほとんどです。でも、私の家族もそうでしたが、いつか暗いトンネルは抜けられます。『自分の人生を諦めないで』って思いで利用者さんと向き合っていますね」と、まっすぐな眼差しで語る伊藤さん。新規事業でかなえたいのは、伊藤さんたちが見守ってきた歩みを、今度は事業所の外に広げいくことなのだと思いました。

伊藤さんの言葉を受けて、「利用者さんのほとんどは諦観しているというか。個人の権利を放棄している人が多いんです」と話す本間さん。「でも、誰にだって自分のやりたいことを主張する権利があります。もちろん、障害があろうとも。僕らの役目は、障害のある人が自分自身の権利を自ら護れるようになるためのサポートなんです」と努めて明るい口調で話す本間さんの目線は、真剣そのものです。中山さんも、力強く「目の前の人が持つ力、可能性を信じることが本当に大切」と言い切ります。

目の前の人を真摯に尊重する強い意志が伝わる、3人の熱のこもった言葉に終始圧倒されながら、「しん」が始めようとする事業の「その先」を想像してみました。

今はまだ想像するだけですが、こんな流れのある社会が本当に実現したらと思うと、なんだかワクワクします。でもきっと、これが当たり前になっていくことが、これからの社会に必要なのだと思います。まずは最初の一歩を、一緒に踏み出していきましょう。

(取材 2024/1/16 伊藤成美)

一般社団法人 しん
募集職種 ①利用者への直接支援(生活支援・就労支援、社会参加支援など)
②事務書での間接支援
契約形態 ・常勤職員   : 週40時間勤務
・短時間常勤職員: 週30時間勤務
・非常勤職員  : 週1日~応相談
給与 未経験者:月給19万円~、施設長候補:月給25万円~
※詳細については、経験年数などを考慮し、面談の上で決定します。
待遇・福利厚生 昇給年1回、賞与年1回、社保完備、交通費規定支給、資格手当、一人暮らし応援手当、研修制度
仕事内容 ①利用者への直接支援(生活支援・就労支援・社会参加支援など)
・アセスメント
・個別面談/個別支援
・個別支援計画の作成
・プログラム開発
・新しい働き方の創出(超短時間雇用)
・ケースカンファレンス  など
②事務所での間接支援
・経理、労務などの事務
・社会資源や企業などとの連携
・イベントの企画運営 など
勤務地 運営する事業所のいずれか(※名古屋市西区内)
勤務時間 9:00~17:45 ※昼休憩45分間
休日休暇 年間休日120日(2022年実績)、週休2日制/一部シフト有、祝日、有給、慶弔
応募資格 ・未経験者も歓迎します(OJT、社内研修有り)
・福祉経験者、有資格者も勿論歓迎です。
求める人物像 ・当法人の理念に強く共感できる方
・リカバリーに基づいた支援に関心がある方
・人と関わることが好きな方
・スタッフ間のコニュニケーションを大切にできる方
・楽観性とユーモアを大切にできる方
・新しいアイデアや発想を積極的に受け入れられる方
募集期間 2024年3月8日から4月8日まで
採用予定人数 2〜3名
選考プロセス 下記「問い合わせ・応募する」ボタンよりエントリー

① 見学
② 書類審査(履歴書・職務経歴書)
③ 一次面接
④ 職場体験 ※希望者のみ
⑤ 二次面接
⑥ 採用

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。