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2020-09-09

まちの味わいを料理する人を仲間に、ゆるやかだけど、力強くつながりながらナリワイをつくる|株式会社松風カンパニー/上木食堂・nord


※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

桑名市といなべ市をつなぐ、三岐鉄道北勢線。線路幅が762mmのナローゲージ(狭軌線路)の上を走る、小さな黄色い電車。西桑名駅から1時間ほど電車に揺られた先に、終点・阿下喜駅があります。

三岐鉄道北勢線

阿下喜駅が位置するいなべのまちで、「八風農園(農園)」「上木食堂(飲食店)」「フライベッカーサヤ/Freibäcker SAYA(パン屋)」「岩田商店(ギャラリー)」と、さまざまな事業を展開するのが、「育てること、食べること、楽しむこと」のキャッチフレーズを掲げる、松風カンパニーです。松風カンパニーでは今年の秋、新たにお店を立ち上げる予定だそう。今回の求人では上木食堂と新店舗、それぞれで調理を担当する仲間を募ります。

取材に伺うなら、ただ話を聞くだけではなく、ぜひとも上木食堂のごはんも食べたい!と、取材当日はお昼の時間に合わせて阿下喜へ向かいました。阿下喜駅に降り立つと、大きな山を望み、きれいな川やたくさんの木々が広がります。駅から坂道を10分ほど歩くと上木食堂に到着。お店の軒先に目をやると、ベンチに腰掛けて開店を待つ、地元にお住まいと思しき方たちの姿が。窓越しに望む調理場に目をやりながら、楽しそうに過ごす姿に、思わず「いい風景だなぁ〜」とつぶやいてしまいました。

上木食堂

上木食堂では、一つのルールのもとで料理がつくられています。それは、八風農園をはじめとした農園で作られた季節の野菜、地元産の食材を使って料理をこしらえること。魚介類は他県のものを仕入れるものの、それ以外は「どうしても」という場合を除き、ほとんどは近隣エリアの、顔の見える仲間から仕入れているといいます。

上木食堂

上木食堂

おしながきには、たくさんの料理の名前が並んでいて、見ているだけでわくわくします。ランチをいただくと、サラダもメインも、どれもが食材の個性がまっすぐ伝わってくる、とびきりのおいしさ!このおいしさを求めて、休日には名古屋など県外からも多くのお客さんが訪れるというのも、納得です。

上木食堂

上木食堂

取材でお話を聞くのは、上木食堂を切り盛りする松本耕太さん(写真左)と、スタッフの伊藤美波さん(写真中央)。そして、八風農園で自然農法による野菜づくりに取り組み、松風カンパニーの代表も務める寺園風さん(写真右)の3人です。

株式会社松風カンパニー

まず、新しいお店について教えてもらいました。新店舗「nord(ノール)」で提供するのは、フレンチをベースとした料理。上木食堂は昼営業と夜営業の間に休憩時間を設けていますが、nordは休日には昼から夜まで通しでの営業を予定しています。位置する町名に“北”が含まれていたり、“北”勢線の終点駅のまちにあるなど、何かと“北”に縁がある場所だからと、フランス語で“北”を意味する単語を名前にしたそうです。

nord

余談ですが、ランチを食べたあと、インタビュー開始までの時間でまちを散策しようと上木食堂を出たら、工事中の雰囲気の良い建物を見つけました。その直後に畑仕事を終えて、食堂に向かう寺園さんと遭遇。インタビューの中で、「さっきの建物が新しいお店ですよ」と言われたときは、とても驚きました(笑)

寺園さん

それにしても、のどかな風景と「フレンチ」とのギャップには、少しびっくりしました。上木食堂とは、ちょっと違った雰囲気になるのでしょうか。

寺園さんに聞くと、「営業形態や提供する料理のジャンルこそ違いますが、nordでも上木食堂と同じく、地のものを使った料理を提供するスタイルを通します」との答えが。「これまでとはまた違ったかたちで、僕らが大事にしてきた季節の味を楽しんでもらえる場としてきたいですね」と、笑顔で続けます。

nordを任されるのは、現在上木食堂で調理を担当する西山さんという方で、以前はフランス料理店で経験を積んでこられたそうです。なるほど、だからフレンチベースなのですね。
ただ、寺園さんと松本さんいわく、「そもそも新しくお店を立ち上げることになったのは、成り行きみたいなもの」だったそう。一体どういう流れで、そんな成り行きに…?いきさつを寺園さんに説明してもらいました。

「ある日、このまち一番ともいえるパワフルな方から、『空いた土地に鉄道博物館を建てるから、それに併設するかたちで飲食店を開いてくれないか』と相談を受けたのがきっかけです。その方は、日本でも数少ないナローゲージの北勢線を廃線から守るために尽力された方でもあって、鉄道模型をたくさん集めている知人と一緒に博物館を作ろうとなったみたいなんです。で、見る場所の横には食事ができる場所があると良いから、と相談があって。それで、西山くんにやってみない?と投げかけて、応えてくれたからフレンチのお店が立ち上がるに至ったんです」

寺園さん

寺園さんは、「実は、松風カンパニーの事業はみんな、場所の縁、人の縁から、流れで出来上がりました」と続けます。例えば上木食堂ができたのも、寺園さんがいなべに移住後、地元の人から「取り壊し予定の旅館がある」と紹介されたのがきっかけでした。

「旅館をひと目見て心惹かれて、すぐに松本に『この場所でなにかできないか』と相談したんです。彼も二つ返事で『ここで料理を振る舞いたい』と言ってくれて。この場所と、この場所で何かをしたいと言ってくれる人がいなかったら、上木食堂は生まれていませんでしたし、もっと言えば松風カンパニーという会社も、できることもなかったでしょう」

寺園さん

会社に限らず、何かを生み出すためには綿密な前準備、計画が必要と考えてしまいます。でも松風カンパニーの場合は、土地と人、思いがそろってはじめて、新しい場所が生まれる。いい意味でざっくりとしていて、自然な流れに身を任せている印象です。

松本さんは上木食堂を立ち上げるのと併せて、いなべへの移住も決めたというから驚きです。はたらく場所としてだけでなく、生活する場所としての、まちの印象も聞いてみました。

松本さん

「昔から住んでいる人も多くて、家も密集しているから、良くも悪くも人との距離が近いですね。だから移住してからは、ご近所さんへのあいさつを心がけていました。このまちの一員となって暮らしていくのだと、ちゃんと意識しておきたかったんです。今では当たり前に、近所のひとたちとおしゃべりしていますよ(笑)新しく仲間になる人にも、このまちの人と関わっていくための距離感をイメージしてもらえたらって思っています」

開店前の様子を思い出しても、松本さんのいう「距離感」が、心地良く取られているというのがわかるような気がします。「まちと、人と、関わっていく」というのも、上木食堂、ひいては松風カンパニーではたらく上でのキーワードとなるのだろうと感じました。

一方、「阿下喜にこんな素敵な場所ができたと知ったときは、すごく驚いたんですよ」と語るスタッフの伊藤さんは、阿下喜の出身。大学進学を機に地元を離れ、卒業後は県外で飲食業に就いていたそうです。

伊藤さん

「地元を離れたのは、ここには何もないと感じていたから。でも久しぶりに地元に帰ったら、すごく雰囲気のある食堂ができていて、正直『どうして!?』って思いましたね。地元に帰ると決めたとき、漠然と『はたらくなら、上木食堂が良いな』と考えていたら、たまたま求人の募集が出ていて、すぐに飛びついちゃいました(笑)」

外から見ているのと実際にはたらいてみて、ガラッと印象が変わってしまう、なんてもことは往々にして起こりえるのでは。そんな思惑なんて、微塵も感じさせない様子で、伊藤さんは「毎日めっちゃ楽しいです!」と笑顔を見せます。

伊藤さん

「同じ飲食の世界でも、今までとはまったく違うんだと、とても驚きました。ここでは本当に、いろんな人との距離が近いんです。お客さんはもちろん、生産者さんの顔もばっちり見えるって、実はなかなかありません。どんな人がどんな思いで、野菜を作ったり、鶏を育てたりしているかを知っているからこそ、私たちは自信を持って料理をお出しできているんだと思います。それが、ただただうれしいですね」

確かに、飲食店と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、お店の人とお客さんです。でも実際には、お店に並ぶものをつくる、ツクリテさんの存在も不可欠。その人たちとの距離も近いのが、上木食堂の魅力となっているのでしょうね。
ただ、距離が近い分、難しさもあるかと思います。例えば、上木食堂とnordの根幹ともいえる「季節の野菜、地元産の食材を使う」というルールは、ときには厳しい制約を生む可能性だってあります。でも松本さんは、「だからこそ、やらないといけないって思いがありますね」と語ります。

松本さん

「上木食堂を立ち上げるとき、八風農園のコンセプトである『みんなの食卓をそろえる』をかたちにしたいと考えました。だからルールというより、目標をかなえるための約束事なんです。正直に言えば、ほしい食材を必要な分だけ仕入れられるほうが楽です。でも、僕らは楽をしたいわけではない。今だからこそ採れる食材だけを使うというのはつまり、その土地の旬をまるごと味わえるってことで、その時期にほしい食材が手に入らないのにはちゃんと理由があります。楽に手を入れる『ごまかし』は必要ないんです。それに、季節感、自然の流れみたいなものに逆らうことなく身を任せて楽しんでいければ、新しい『楽しむきっかけ』にも出会えるんじゃないでしょうか」

楽をするためではなく、楽しいと思えること、やりたいと思ったことに全力で向き合う。そんなひたむきな姿勢に惹かれて、次々とご縁がつながってきたのだろうなと感じました。そんな、ゆるやかだけれど力強い流れに加われると思うと、たくさんの刺激がもらえそうです。

「できるなら、新しい仲間は前向きな人だとうれしいですね(笑)前向きさって、とっても重要。生き生きと明るく、何事も楽しみながらはたらく姿って、見ているだけで気持ちの良いものですから。そんな人と一緒にはたらけたらと思っています。あと、もしもはたらき始めてから、こうしたほうが良いと思うことがあれば、遠慮なく言ってもらいたいです。僕らもまだまだ成長中の身ですから、互いに意見を出し合って、学び合い、成長し合っていけるような関係を築いていきたいです」

松本さん

新しく加わる仲間は、調理経験者が望ましいそうですが、意欲があれば未経験でもOKとのこと。「楽しいだけではないですけれど、料理やおいしいものが好きで、きちんと調理に向き合っていく気合があれば、僕らがしっかり鍛えていきますよ」と松本さん。頼もしいです!

最後に、寺園さんにも、これから加わる仲間に対しての思いを聞きました。

「便宜上、僕が代表となっているけれど、代表だからと戦略的に何かを企てるようなことは一切しません。僕らは、思いと、場所と、一緒に頑張ってくれる人との出会い、つながりの中で、ここまでやってきました。だからこそ、これから一緒に頑張っていくことになる仲間には、好きなこと、将来の夢なんかは、どんどん口にして、自分を開いていってもらいたいです。それがご縁の始まりとなると思うので。大丈夫、僕もいい塩梅でこじ開けに行くので(笑)」

あら、心しておかないといけませんね(笑)
自分を開くのは、ちょっと恥ずかしさや不安もありますけれど、3人の姿を見ていたら、ただただ可能性が広がるばかりなのだろう、と思いました。

(取材 2020/8/11 伊藤ひでみ)

株式会社松風カンパニー
募集職種 飲食スタッフ
契約形態 アルバイト/正社員
給与 アルバイト 時給880円〜
正社員 月給163,000円〜
待遇・福利厚生 正社員は、各種保険完備
仕事内容 ホールスタッフ、キッチン補助
勤務地 上木食堂(三重県いなべ市北勢町阿下喜2057)
勤務時間 要相談
休日休暇 基本 水・木定休日
応募資格 飲食経験者
求める人物像 明るく、前向きで、料理のできる方
募集期間 12月9日~01月10日まで
採用予定人数 1名
選考プロセス まずは下記「問い合わせ・応募する」ボタンよりご連絡ください。採用担当より次の選考についてご案内します。

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。


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