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2021-05-10

食卓と造り手に橋をかける、みりんのコンシェルジュ|株式会社角谷文治郎商店


※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

ごはんを食べるのも、つくるのも好き。でも、なかなか上手にお付き合いできない調味料があります。
それが、みりんです。
ふだん、思いつきの目分量で料理を作ってしまうのもあり、みりんはいつも「どの場面で使えばいいのだ…」と迷ってしまいます。

そんな“みりんビギナー”な私が今回訪れたのは、株式会社角谷文治郎商店。2020年に創業110周年を迎えた、老舗みりんメーカーです。看板商品である「三州三河みりん」をはじめ、有機米のみりん、みりん仕込みの梅酒などを製造し続けています。
角谷文治郎商店ではこの夏、新たに店舗をオープンすることに。新店舗の運営を任せるスタッフを募りたいとのことで、取材のため本社のある碧南市へ。みりんづくりの場に伺うのは人生で初めてなので、ちょっとどきどきです。

新しいお店は三重県多気郡多気町にできるのだとか。いったいどんなお店なのでしょうか。家業である角谷文治郎商店で働き、今回の新店舗の運営にも携わる、角谷文子さんに話を聞きました。

「店舗を構えるのは、日本の食や文化をテーマにした商業リゾート施設『VISON(ヴィソン)』内に設けられる、7月にオープン予定の食エリア『和ヴィソン』の一角です。『和ヴィソン』のコンセプトは『和食文化と魅力の発信』。私たちのほか、醤油や味噌、酢といった発酵調味料、出汁のメーカーの店舗や、和食や蕎麦などの飲食店が軒を連ねます。最大の特徴は“販売店”であり“製造現場”であること。和食文化を“学んで体験できる蔵”として、開業後は実際にここでみりんを醸造するんですよ」

販売だけでなく醸造も同じ場所で行うなんて!建設中の「和ヴィソン」の写真を見せてもらうと、蔵を思わせる造りの建物がずらり。写真左から味噌、醤油、みりん、酢のお店だそうです。オープンにあたり、イチからみりんづくりを行うため、新しく設備・機械を導入し、醸造担当者も採用したそうです。「ここは、すごく刺激的な空間になりそうだぞ…」と思いました。というのも今回、取材と併せて本社でのみりんの製造現場を見学させてもらったのですが、そこでたくさんの刺激を受けたのです。
一番驚いたのが、香りの変化のめまぐるしさ。蒸されたもち米のもったりとした香り、焼酎のキリッとした香り、発酵品独特の丸みを帯びた香り…さまざまな香りが蔵の中を移動するごとに変わり、ひとつひとつがマスク越しでも強く感じられました。
香りは、文字や映像では伝えきれないもの。お店であり蔵であることで、みりんづくりを五感で感じられる場になるのだと、文子さんの話を聞いて想像しました。

将来的にはここでつくられたみりんも、商品として販売するそうです。「うちの三州三河みりんの醸造期間は1年以上。お店でつくったみりんを販売できるようになるのは、まだちょっと先ですね」と続けるのは文子さんの父で、3代目社長の角谷利夫さん。「三州三河みりんの」と前置きされたとなると、他と違いがあるのでしょうか。

「品目表示上では同じ『本みりん』でも、私たちがつくる三州三河みりんは特に醸造期間が長いんです。一般的な本みりんの醸造期間は2〜3ヵ月程度。対して三州三河みりんは1年以上かけて醸造します」

原材料にもこだわりが。三州三河みりんの原材料は、もち米、米麹、米焼酎のみ。糖類などの添加物や醸造アルコールは一切使用しません。もち米と、米麹や焼酎をつくるのに必要なうるち米は契約農家から玄米の状態で直接仕入れ、仕込みに併せて都度精米するそうです。加えて、焼酎の蒸留も自社で行います。
伝統的な製造方法「お米一升、みりん一升」にのっとっているのも特徴です。お米1升のうち、もち米が9割、1割が米麹用のうるち米。これに米焼酎を0.5升あわせて、1升(1.8リットル)みりんを仕込みます。一般的な本みりんの場合、お米1升あれば4.5〜7.2リットルのみりんがつくれるとされています。つまり三州三河みりんは、2〜4倍の原材料を使っているというわけです。ぜいたく…!

できあがった三州三河みりんはべっ甲を思わせる琥珀色で、口にすると蜜を思わせる芳醇な香りと味が広がります。たくさんのこだわりが詰まった三州三河みりんを、角谷社長は“旨味の調味料”と称します。

「人間の舌は、まず甘さを感知してから、後に続く味を感じます。その、後に続く味に厚みをもたせる上で欠かせないのが旨味です。旨味はどれだけ重ねても過剰になることはなく、かつおや昆布の出汁とみりん、それぞれの旨味が重なれば、どんどん厚みが増し、奥深い味わいとなります。
旨味は、調味料の“さしすせそ(砂糖・塩・酢・醤油・味噌)”のような、強い主張はありません。ですが料理の土台となる、大事な存在。みりんはその土台づくりに、一役買う調味料というわけです。普段の献立に使わない手はないですよ。
そしてお米の旨味は、日本人が最も慣れ親しんだもの。私たちは、そんなお米の旨味を余すことなく引き出すために、こだわり抜いて三州三河みりんをつくり続けてきました」

みりんの魅力を熱く語る角谷社長の姿に、ただただ圧倒されるばかりです。そしてこの熱量の高さが、今回のVISON出店につながるご縁を呼び寄せることになりました。
角谷文治郎商店ではこれまで、品質管理を第一とした方針で事業を展開してきました。市場のシェアの大きく占める大手醸造メーカーに数で対抗するのは現実的ではなく、営業展開よりも「品質を安定させること」を最優先に、品質管理体制の徹底にかじを切ったのです。
製法の独自性に加え、品質管理を徹底したことから、三州三河みりんは「替えの利かない高品質なみりん」として知れ渡り、百貨店や大手スーパー、食品セレクトショップなどで扱われるように。飲食関連の催事出展などでの「おいしいみりんを求める人」との出会いも育んできました。

飲食店との取引も多く、日本食はもちろんのこと、イタリアンやスイーツ、ベーカリーなどジャンルもさまざまです。料理専門の雑誌などでも取り上げられ、料理業界でも知られる存在となりました。

そうした、三州三河みりんを通じた広がり、ご縁の一つ一つを大事にしてきた結果、VISONオープンにあたり、出店の声がかかるに至った、というわけです。

角谷社長と文子さんは「今回の出店は、私たちにとって大きな挑戦なんです」と語ります。三州三河みりんは「みりんを使う人」「良質なみりんを求めている人」には広く知られるようになりました。ですが、「普段みりんを使っていない人」に目を向けると、どうでしょうか。

VISONに訪れるのは、和食文化に興味がある、おいしいものが好きな人。必ずしも「みりんを使う人」「三州三河みりんを好きな人」とは限りません。一方で、同じエリアには和食に欠かせない醤油や味噌、出汁などの造り手、それらを使って料理を提供する飲食店が並びます。そこで「和食のおいしさにはみりんが欠かせない」と知ったら、「どうしてみりんが大事なの?」と興味がわくかと思います。
つまり今回の出店は、“和食文化”という入り口から「これまでみりんに馴染みのなかった人に」に、みりんを知ってもらうまたとない機会となるのです。

「お店を持つこと自体、当社では初めてのこと。今回新しく加わる人とは、お店の“これから”を一緒に考えて、いろんなコトを展開していきたいですね」と文子さん。

「お店がオープンしたら、訪れたお客さまにみりんの特徴や使い方を紹介したり、仕込みの流れを説明したりと、みりんの魅力と当社のこだわりを伝える案内役、コンシェルジュのような役割を担っていただきます。ゆくゆくは、店内でのワークショップや、和ヴィソン内でのコラボレーションなども企画していきたいです」

社長も「単に商品を売るためではなく、魅力的な情報で商品をラッピングして、お客さまにお届けしてもらいたいです」と続けます。この言葉から「みりんの良さを発信する」のが、店舗スタッフに一番に大事にしてもらいたいことであるというニュアンスを感じました。

正社員での採用の場合、将来的には店長職に就いてもらうことも視野に入れています。販売や営業、店舗立ち上げの経験がある方は歓迎とするものの、文子さんは「未経験でも、ゼロから何かをつくることが面白そうと思える、熱意のある人であればぜひ!」とにっこり。

ただ、醸造の業界で、しかも未経験となると、興味があってもちょっとハードルが高いようにも…と切り出すと、「まったく異なる職種から飛び込んでくる人も少なくないですよ」とのこと。実は文子さん自身も、大学卒業後は一般企業やNPO法人で働いた後、「改めて家業のみりんづくりを知りたい」と、角谷文治郎商店で働き始めました。文子さんの夫でみりん製造に携わる出口孝浩さんも、未経験からみりんの造り手になりました。催事出展時には、現場担当としてブースに立つことも。日本人はもちろん、みりんを知らない外国人なども相手に、三州三河みりんの魅力を伝えています。以前は、関東の企業に勤めるオフィスワーカーだった出口さん。住む土地も、仕事の内容もまったく異なる中、戸惑いはなかったのでしょうか。

「最初は覚えることも多くて、戸惑いがまったくなかったといえば嘘になります。でも、この業界に限らず、最初は何でも覚えることから始まります。特別な知識や技能は必要ないですし、経験も“あったら良い”くらいなもの。大事なのは、続けることです。覚えて、学んで、考え続ける姿勢があれば、自然と仕事は身についてきますよ。
立ち上げとなると、楽しいだけじゃないかもしれません。ですが、素直で真面目で前向きさがあれば、経験値を高め、状況を面白がっていけると思います」

7月のオープンまでは、本社研修を通じて三州三河みりんの特徴や醸造の流れなど、基本的な仕事の流れを学びます。研修を終えたら、本社とは離れた土地での勤務となりますが、研修を通じて本社の社員さんとも交流できそうですね。また、販売や店舗運営に関する研修は、長くお付き合いのある取引先に協力を仰ぎ、実際の売り場での販売を体験してもらう予定だそうです。

最後に、改めて求める人物像について聞いてみると、文子さんから「やっぱり、食べることに貪欲な人、食いしん坊な人ですかね(笑)」との答えが。

「理想は、三州三河みりんを使ったことのある人、三州三河みりんが好きな人。毎食のおかずや、スイーツづくりなどに、三州三河みりんを使ってくれている人が来てくださったらうれしいです。
けれど今の時代、残念ながら日常的にみりんを使う人は減っています。ですから、まずは『食べること』への探究心の強さは、欠かせないものだと思います。そういった人が一度みりんの良さに触れたら、誰よりも魅力を上手に伝えられる人になるのではないでしょうか。
知らないのであれば、まずは知ってもらえたら。うちのみりんの良さを感じてもらった上で、一緒になにかやりたいと思ってくださったら、それで十分です」

文子さんの言葉に、思わずハッとしました。「知らないのであれば、知ってもらえば良い」。知ってもらった先に、きっと心動かされるものがあると信じているからこその言葉に感じました。
私も、たった1日の取材でどんどん引き込まれてしまいました。きっとそれは、皆さんが「みりんの魅力」を胸を張って伝えてくださったからでしょう。

取材を終えた帰り道。頭の中に浮かぶのは「どんな料理でみりんを使おうか」ばかり。今の季節の食材に合わせるならあれも良いのでは、これも面白いのでは、味付けは…。考えているだけでわくわくして、お腹が空いてきます。三州三河みりんの魅力も、誰かに話したくて仕方ありません。私も生粋の食いしん坊で料理好き。しかも、おしゃべり好き。想像が止まらなくなるのも、「聞いて聞いて!」となるのも当然です。

新たに加わる人も、三州三河みりんの魅力に触れたら、私以上にあれこれ考えが広がって、止まらなくなっちゃうのではないでしょうか。そんな人とともに、三州三河みりんの魅力が今まで以上に広がっていくと思うと、とても楽しみです。

(取材 2021/4/22 伊藤成美)
※取材の際、撮影時のみマスクを外していただきました。

株式会社角谷文治郎商店
募集職種 販売職
契約形態 正社員(店長候補)、パート・アルバイト
給与 【正社員】
月給:170,000~220,000円
※スキルや経験を考慮し決定します
※試用期間3か月あり(期間中も同条件)

【パート・アルバイト】
時給:900~950円
※スキルや経験を考慮し決定します
※試用期間3か月あり(期間中も同条件)

待遇・福利厚生 【正社員】
健康保険、厚生年金保険、労災保険、雇用保険加入
通勤手当、残業手当、制服貸与
退職金制度あり(対象:勤務年数3年以上)
昇給:年1回(予定)
賞与:年2回(予定)

【パート・アルバイト】
健康保険、労災保険、雇用保険加入
通勤手当、制服貸与

仕事内容 みりん、米焼酎、みりんを使ったスイーツ等の接客・販売
勤務地 三重県多気郡多気町ヴィソン672番1蔵前22
(※正社員は、VISON開業までは、本社で研修あり)
勤務時間 【正社員】
9:00~19:00
実働8時間(シフト制)
休憩:あり(60分)
※研修期間中は、勤務時間が変更になる可能性あり

【パート・アルバイト】
勤務時間:9:30~18:30、1日4時間以上、週3回以上
※研修期間中は、勤務時間が変更になる可能性あり

休日休暇 【正社員】
シフト制

【パート・アルバイト】
週末に働ける方を優遇
応相談

応募資格 【正社員】
40歳未満の方(キャリア形成のため)
高卒以上

【パート・アルバイト】
高卒以上

求める人物像 発酵や醸造に興味がある方
明るくてコミュニケーション能力がある方
募集期間 2021年5月10日~6月23日まで
採用予定人数 正社員:1名
パート・アルバイト:4〜5名
選考プロセス 下記「問い合わせ・応募する」ボタンよりエントリー

書類選考後、面接

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。


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