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2021-02-06

「面白がる」を合言葉に、“みんな”と“自分”を行き来して「ありたい姿」を模索する、まちのコーディネーター|港まちづくり協議会


名古屋市港区にある学区のひとつ、西築地学区。「名古屋港水族館の近く」「夏に『海の日名古屋みなと祭』をやっているところ」と言えば、ピンと来る人も少なくないのではないでしょうか。
この小さなまちで、港まちづくり協議会(以下、まち協)は「暮らす、集う、創る」をテーマに、さまざまな活動を、住民・行政と協働で展開しています。
このたび、新たに活動に加わる職員を募ることになりました。

取材当日、「取材していただくなら、ぜひこのまちを見ていただくのが良いんじゃないかと思って!」との提案が。というわけで、今回の取材は、まち歩きからスタートです。

名古屋港に近づくにつれて観光の雰囲気が強くなるものの、西築地学区全体としては古くから続くまちといった印象です。ですが、皆さんと歩いてみると、景色の見え方が変わることに。

「このサルスベリの樹は、昔あった料亭の門のような役割を果たしていたんですって」「小学校の児童数が多かったときは、登校の集合場所になっていた神社から学校まで、子どもたちがぞろぞろ列をなしていたって聞きました」「外国からの船も多く、一昔前だと外国人船員や日雇いの労働者を目にするのは日常茶飯事だったそうです」などなど、ただ訪れただけでは知り得ない歴史やエピソードがどんどんと飛び出してきました。

大通りから一本入った道脇に置かれている、とある看板。これは「運転している人は『歩行者“に”注意しましょう』という意味と、『道を歩く歩行者“も”、車に気をつけましょうね』って意味が含まれている」とのこと。このエピソードも、ご近所さんから聞いたのだそうです。登場するエピソードの数々に終始感心しっぱなしで、「きっと新しい職員さんも、こんなふうに『まちを語れる人』になるのだろうな」と直感しました。

まち協は、築地口駅からすぐにある「港まちポットラックビル」を拠点に活動しています。以前は文具を扱うミニデパートだったそう。入り口にはその名残が伺えます。

港まちポットラックビルのすぐ近くには競艇場外発売場「ボートピア名古屋」があります。東海地区の競艇(ボートレース)場で開催される競走の舟券を主に販売しており、日々多くの人が来場しています。

「ボートピア名古屋」は、地域活性化の手立てとして誘致が検討され、住民投票の結果、開設が決定しました。そして、2006年の開設に伴い競艇を施行する自治体(蒲郡市等)から「環境整備協力費」(「ボートピア名古屋」の売上金の1%)が名古屋市に交付されることに。まち協はこれを原資として、活動をスタートしました。
公金を使って展開される取り組みは、すべて「公共事業」。この地域に生活する住民、この地域に訪れる人といった「みんなのための事業」としての妥当性が求められるといいます。

事務局次長を務める古橋敬一さんは、大学時代よりまちづくり・コミュニティマネジメントに関するさまざま活動に携わり、その縁から2008年より事務局に加入。10年以上にわたって港まちで活動を続ける、一番のベテラン職員です。最近では、まちの子どもたちから「あ、“ん”のおじさんだ!」と呼ばれているそう。

「まち協のキャッチフレーズ『なごやのみ(ん)なとまち』が浸透してきたからか、『“ん”のひと』『“ん”のおじさん』って呼ばれることが増えたんです(笑)。
『公金を使ったまちづくり』を実践する団体として立ち上がったものの、まち協には当初、中長期的かつ具体的なビジョンがない状態でした。転機を迎えたのは2013年。活動が形になってきたタイミングで、僕らがめざす在り方、根っこにする思いを言葉にして、ビジョンを打ち立てていこうという運びとなり、そこで導き出したのが『なごやのみ(ん)なとまち』というフレーズでした。『みんな』と『みなと』をかけ合わせたダジャレのようなものです。
でも、ビジョン策定を進めていくうちに、この言葉が実はまちにフィットしていたとわかって。このまちには、港の成長とともに全国から集ったたくさんの労働者で栄えてきた歴史があります。地元の人もそうでない人も集まる、このまちは紛れもなく『みんな』のまちだったんです」

しかし、以前は多くの人でにぎわった港まちも、少子高齢化や商店街の衰退といった、まちの課題に直面していきます。その課題解決の方法として挙がったのが、「ボートピア名古屋」の誘致、そしてまち協の設立でした。
活動が軌道に乗り始めた段階で定めたキャッチフレーズが、まちの原風景を思い起こさせるものでもあった、というわけです。偶然ではあるものの、どこか「導かれている」ような感じもします。

「なごやのみ(ん)なとまち」を実現するため、地域住民にアンケートを取るなどして、3つのテーマ「暮らす、集う、創る」と、9つのシナリオを作成。2019年には時点修正の改訂も行い、現在では35もの事業を展開しています。(事例の詳細はこちらを参照ください)

防災、子育て、コミュニティーガーデン、アートプロジェクトなど、「まちづくり」という言葉にひもづく事業であれば、まち協の守備範囲といえます。
新しく加わる職員の方には、アシスタント業務を通じて事業を動かすにあたって必要となる書類作成の流れやスキルを習得してもらいながら、どんな事業が展開されているのか、どんなふうに事業を動かしているのかなどを学んでもらう予定です。

「まずはいろんな仕事を経験してもらいながら、その人の興味のある分野や得意そうな業務なども踏まえて、少しずつ仕事を任せていけたらと思っています。前任の職員は、広報周りを担当していたので、例えば広報やプロモーションの経験がある方だと、仕事内容がイメージしやすいかと思います。それに、公金を扱うので事務能力も要求されます。
でも正直言って、スキルはそこまで重視していません。僕らの活動って本当に多岐にわたるので、『あったら良い』くらいで。そもそも、今集まっているみんなも、個性が全然違いますからね」

例えば常勤職員の児玉美香さんは、大学で美術史を学んだ後、「あいちトリエンナーレ」の長者町エリアの運営に参加。会期に際してはアーティストとまちの住民との間に立って調整をしたりしていたそうです。まち協に加わったのは、2014年の秋。アートプロジェクトを展開するにあたって、一緒に取り組んでほしいと声がかかったそうです。

「アートプロジェクトを運営するのにも興味がありましたし、まちの人と一緒に何かやっていくことにも関心があったんです。これまでの経験が生かせるなら、とお声がけに乗らせてもらいました。なので、最初は『アートプロジェクトをどうやってまちの中で展開していくか』くらいしか考えていませんでした」

そんな児玉さん、今ではガーデン事業や、フリーペーパー「ポットラック新聞(タブロイド版・かわら版)」の制作など、さまざまな事業を担当しています。新しいことにトライするのは大変だったのではないでしょうか。

「もともと、明確に『これがしたい』って決めるより、『面白そう』『これができたら良いな』って気持ちから、『じゃあどんなことができるかな』を考えていくタイプなんです。だからどの事業も楽しくやってきましたよ。もちろん、大変だと思うことは多々ありますけれど(笑)。
でも、いろんなことをやっていると、今まで気づかなかった自分に出会える機会もあるんですよね。例えば、アーカイブプロジェクトという、このまちに長く住んでいるおじいちゃんやおばあちゃんに話を聞いて記録するプロジェクトがあって。一人ひとりの歴史も、大切にしてきた思いも、どうやって人生を歩んできたかも、みんな本当にまったく違うんです。それに触れていたら、気づいたら生きていく上での勇気や元気、自分がどんなふうに生きていきたいかを考えるきっかけをもらえていました。
まち協に来る前の私だったら、まちのおじいちゃんやおばあちゃんと話していても、『へぇ〜』で終わらせてしまっていたかもしれないです。受け止められたのは、活動を通じて起こった変化。改めて私はアートも好きだけれど、人が集う場所や、そこでの出会いが好きなんだなって気づけました」

児玉さんの左に写るのは、非常勤職員の大西未来さん。大学生の頃に取り組んだ、公募型事業の提案と実施をきっかけに、まち協との関わりができ始め、すぐ近くが地元だったこともあり、アルバイトから職員となったといいます。

「事業の進め方も決まりきっているわけではないので、自分なりのやり方を考えなければいけない場面が多いんです。正解がみつからなくて苦しい思いをすることもあるんですけれど、だんだんと『自分には何ができるのか』『自分ならどうしたいか』を考えるのがベースになって。そしたら、自分のことが前より見えてきたような気がします。周りから『大西ちゃんはこれができるよね』って言われて、そうか!って気づくこともありますよ」

非常勤職員の出勤日はイベント開催時を除き、月〜土曜のうち4日程度。一般的な週5日勤務と比べると、1日余る計算です。大西さんはその1日を「自分のために使える日」と考えてきたそうです。

「人によっては、ゆっくり休む日としても良いし、自分の趣味のために使っても良い。私は去年だと、別のところでのアルバイトに充てていました。たった1日ですけれど、それをどう使っていくかを考えることも楽しんでもらえたら、ここで働く時間もより楽しいものになるんじゃないかと思います」

同じく非常勤職員の森希さんは大学卒業後、行政職員を経験。その後、港まちポットラックビルでの展示や、まち協主催のイベントに足を運んでいたそうで、求人情報を目にしたのをきっかけに、応募してみることに。現在はポットラック新聞の仕事などに携わっています。

「就職活動をしていた時期から、なんとなく『コミュニティに関する仕事をしたい』と思っていたのですが、しっくりくる仕事を探していた時に、ちょうど求人情報を目にして。お客さんだったときから、まち協の活動に好感を持っていて、『まちづくりの現場を体験できるなかなかない機会』『ここで働けたら面白そう』って思ったら、どうも気になってしまい。せっかくなので応募してみたら、働かせていただけることになりました。
実際に働くようになって、『楽しい』『面白い』って気持ちが、すごく大事だったと気づきました。前だったら『仕事は仕事』と捉える節もあって、それにジレンマを抱くこともありましたけれど、今は難しくても、できる限り頑張っていこう、面白がっていこうって気持ちで、仕事ができているなって感じます」

皆さんのお話の中に、必ずと言っていいほど登場したのが「面白がる」「楽しむ」、そして「自分なら」という言葉。古橋さんも、皆さんの話を受けて、こう続けました。

「どんな仕事も、みんな大変。でも、好奇心や興味関心があれば、大変なところも乗り越えていこうって前向きになれるし、いろんな刺激が得られる。それが次の『楽しい』に出会えるきっかけにつながっていくんだと思います。
ここには、自分の心に芽生えた『やってみたい』って思いから目をそむけずに、『気づいてしまったからには、どうしたら良い?』を考えて、行動に移した人が集まってきているんじゃないかと思います。
自分が何をしていきたいのか、気持ちに向き合って、手探りにでも模索し続けられる人同士が一緒にいられたら、きっとお互いに良い刺激になります。そんな人が新たに加わってくれたらうれしいですね」

まち協では現在、街路樹再生ワークショップを進行中。街路樹を間伐し植え替えなどをした後には、広くなった歩道で定期的にマーケットを開いていこうという案が挙がっているそうです。試験的に開催している定期市と連携を図るなどして、仕組みづくりを進めています。これからも、港まちでは面白いことが起こっていきそうです。
(第2回ワークショップの様子はこちら

ただ、「まち協の仕組みには“賞味期限”があります」と古橋さんは言います。ボートピア名古屋の収益は年々減少傾向にあり、まち協の原資もスタート時と比較して半分程度となっているそうです。未来永劫続く組織とは断言できないからこそ、「新しく加わる人にとって、『特別な時間』を過ごせるところだと思ってもらえたら」と続けます。

「ここは『自分はどうありたいか』を考えながら、頑張り次第で自分の『やりたい』を実践まで持っていける、いわば『修行』の場です。それも、お給料をもらいながら。
もちろん、僕らが手がけているのは公共事業なので、『自分』だけでなく『みんな』を見据える必要があります。でも、『自分』だって『みんな』の一員。『自分』と『みんな』がどんな関係で支え合っているのかを考える視点も、大事にしてもらいたいですね。みんなにとっての課題解決を、自分事にしていく姿勢が抜けていると、強度と深度がなくなってしまいますから」

最後に、今回の求人で巡り会えるであろう、新しい仲間に向けてのメッセージを聞きました。

「やりたいことや働く理由を、あらかじめ言葉にする必要はありません。でも、まち協で過ごす時間が、自分の人生にとってどんなものとなるのかを考え続けてもらいたいですね」

取材を終え、最初に直感した「『まちを語れる人』になるのだろう」という予想は、大外れではないものの、正解ではなかったのだなと気づきました。「まちを語れる」のは、あくまで結果のひとつに過ぎなかったのです。職員の皆さんは、まちと、そこに住む人と向き合い関わり合う中で、自分の在り方を楽しみながら、面白がりながら模索していました。
「はたらくを、楽しむ」。
それは簡単ではななく、むしろ大変で、面倒で、もしかしたら逃げ出したくなる瞬間もあるかもしれません。でも、とても貴重で、豊かなものでもあるのだと感じました。

(取材 2021/1/13 伊藤成美)

※取材の際、撮影時のみマスクを外していただきました。

港まちづくり協議会
募集職種 非常勤スタッフ
契約形態 有期雇用契約
給与 時給1,100円
待遇・福利厚生 厚生年金、健康保険、雇用保険加入、健康診断
※ただし労働条件による
通勤手当(実費相当)
仕事内容 事務局の運営
港まちづくり協議会が実施するまちづくり活動の企画・実施・運営
・「ガーデン」「子育て」などをテーマとしたコミュニティ活動
・地域のお祭りなどの賑わいイベント
・アート&デザインを活用した各種プロジェクトの企画運営など
・各種事業を進める上での資料作成
・その他、事務局の運営に必要な業務
勤務地 港まちポットラックビル(名古屋市港区名港1−19−23)
勤務時間 月~土のうち4日程度
※ただしイベントの日程によっては日曜出勤の可能性あり
交代制として、次の勤務時間の組み合わせによる
①午前9時00分〜午後6時00分 
②午前10時30分〜午後7時30分
休日休暇 出勤日数に応じた年次休暇、夏季休暇あり
応募資格 ①港まちづくり協議会の活動に興味がある方
②コミュニケーション力があり、チームワークがとれる方
③PC スキル(Word、Excel、powerpoint、Illustratorなど)がある方
④大学生不可、社会人経験のある方 
募集期間 02月5日~03月5日まで
採用予定人数 1名
選考プロセス 1.下記「問い合わせ・応募する」ボタンよりエントリー
2.履歴書による1次選考
3.面接による2次選考
4.採用


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メール:info@hatarakuka.jp