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2021-12-06

人口900人の村の“つなぎ手“に。暮らすように働き、地域の幸せをつくる|根羽村役場


※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「根羽村(ねばむら)」という小さな村を、知っているでしょうか。

長野県の南西部最南端に位置し、愛知県と岐阜県に隣接する村。人口は約900人で、村の面積の92%を森林が占めています。村の人たちは昔から自然を大切に、森とともに生きてきました。

この村を支える役場で現在、新たな職員を募集しています。職種は、あえて定義するなら「一般事務」。でも、事務という一言ではまとめられないくらい、根羽村でチャレンジできることはたくさんあります。

「市役所」や「区役所」など都会の行政機関ではなく、「村役場」で働くとは、どういうことなのか。根羽村役場を訪れ、話を聞きました。

長野県と言っても、意外に名古屋からは近い距離。順調に車を走らせれば約1時間30分で根羽村に到着です。

2018年に新庁舎へ移転した根羽村役場。もとは高齢者福祉施設があった建物を改修したそうで、内装・外装には地元の木材が使われています。

迎えてくれたのは、総務課長の鈴木秀和さん(写真左)と、「一般社団法人ねばのもり」の代表理事でありながら、役場にも籍を置いてPR戦略・事業立ち上げを担当する杉山泰彦さん(写真右)です。

取材をさせていただいたスペースには、根羽村森林組合が「木育活動」として作った木製品が並んでいました。森や木は、根羽村にとって象徴的な存在。古くから、林業は村の中心産業でした。

「村民は全世帯が森林組合員で、5.5ヘクタール以上ずつ山を持っているんです。村と組合が一体となって山を守っています」と鈴木さん。

全世帯が山持ち…!? 当時の村長らが確立した独自のしくみとのことですが、さらには村がいちばんの山持ちであることから、村長が森林組合長も兼任するというスタイルにも驚きです。

「各世帯が伐採で収益を得られるよう、明治時代に村有林を全世帯に分配したんです。ところが、昭和後期から平成にかけて木材価格が大幅に下落。林業は衰退していきました。木を切って丸太として売るだけでは、もう稼げない。手つかずになった森は荒れはじめました。そこで、20年ほど前からは“トータル林業”という言葉を掲げ、木材の新しい活用方法を考え、6次産業化をめざすようになりました」

トータル林業とは、木材の生産・加工・販売までをすべて村内で行おうというもの。建築材だけでなく、地域施設の薪ボイラーに使ったり、木のおもちゃを開発したり。大阪府の企業と連携し、杉の間伐材を繊維に加工した「木の布」の商品化も進められているそうです。

森が豊かであれば、村民も豊かに暮らせる。森の恩恵を受けてきた村だからこそ、「なんとか守ろう」という意識が根付いているのでしょう。自分たちで木の付加価値を高め、時代の変化に合わせて産業を継続させていく様子に、村の力強さを感じられます。

「また、根羽村には、三河湾から太平洋に注ぎ込む矢作川の源流があります。豊かな森に加えて、美しい水も村の財産です」と補足する杉山さん。

水源の保全を目的に、流域沿いの自治体・企業との連携も推進されているそう。特に、矢作川から取水した明治用水によって農業が発展した安城市とは、深い交流が生まれています。

根羽村の子どもたちにとっても、川は身近な存在。夏には川遊びが恒例です。

自然に恵まれた環境を活かした教育に力を入れている根羽村。2020年度からは、小学校と中学校が統合して、「根羽村立義務教育学校根羽学園」が誕生しました。高校は通学できる範囲に1校しかないため、ほとんどの生徒は中学卒業後から村外で一人暮らしをするのだそう。15歳から独り立ちできる自立心を育てるため、義務学校での9年間の学びを充実させています。

杉山さんは「一方で、村外に出た若者が戻ってきて働ける仕事が少ないという課題も。ここ数十年で人口はどんどん減少していきました。現在、根羽村の高齢化率は50%を超えています」と話を切り出します。

高齢化や人口減少……。ここまでは、地方が抱える課題としてよく聞く話です。

「しかし、問題意識が強いからこそ、あきらめなかったのが根羽村。外部と連携しながら、さまざまな取り組みを進めてきました。2020年度には、県内外の21もの事業者が村づくりに関わってくれたおかげで、関係人口が拡大。少しずつ村の受け入れ態勢も整ってきて、移住者も増加しました。トライアルを含めた移住者数は、年間で19世帯46人。田舎で子育てをしたいというファミリー層が、根羽村を選択肢に入れてくれるようになりました」

一見すると過疎化した村に思えても、むしろ希望が見えてきているようです。

そんな根羽村の中心を担う村役場の職員には、どんなことが求められるのでしょうか。

「役場職員の仕事は、ざっくり言えば地域の幸せをつくること、村民が豊かに暮らすためのサポートをすること。村役場で働くからには当然、地域の課題解決や地域振興に向き合わなくてはなりません。でも、公務員にできることには限りがあります。だからこそ、民間で活動する人たちの知恵や力を借りて、一緒に何かを起こしていくことが、私たち職員に求められる役目だと思います」

20年以上、根羽村役場に勤める鈴木さんの力強い言葉。

一方の杉山さんは、数々の地方創生事業に携わった後、2018年に東京から根羽村に移住。村民になってようやく3年が経ちました。

「僕が根羽村に移住してきたときにも、鈴木さんが近隣住民に紹介をしてくれました。さそく自宅に上がらせてくれて、一緒にこたつでみかんを食べた人も(笑)。自ら村に溶け込もうという姿勢さえあれば、それを受け入れてくれる土壌はあります。小さな村であるがゆえ、人と人との距離感が近い。この村で暮らし、働くには、コミュニケーションをしっかりとれること、自ら関係性をつくっていけることが重要です」

加えて、「どこの課に配属されても、机に向かっているだけで済む仕事ではありません。言われたことだけでなく、まだ声に出ていない村民の需要にも目を向けられる人が求められます」と杉山さん。

“声に出ていない需要”とは、具体的にどんなことなのか?

根羽村役場にて続けてお話を聞かせてもらったのは、役場内の教育委員会で主任を務める松下剛樹さん。「高齢者向けタブレット講座を企画している」とのことですが、どんなきっかけから講座を始めたのでしょうか。

「教育委員会のなかでも、僕の担当は主に生涯学習。子どもから大人までの学びの充実に携わっています。もともとは小中学校の授業にタブレット端末を導入した経緯があったのですが、シニアのみなさんにもタブレットに触れてもらおうと思ったのは、『近い将来、ガラケーがサービスを終了してスマホに移行する』というニュースがきっかけ。スマホなんて使えないと困っている方々に対し、まずは大きな画面のタブレットを使って練習してみたらどうかと企画しました」

「タブレット講座を開いてほしい」という声があったわけではなく、「ガラケーが使えなくなる」という話題から想像力をはたらかせたのですね。

「最初は単発で講座を機会し、2日間で20人が集まりました。もっと詳しく知りたい!というリクエストに応えるかたちで、現在は継続的に月2〜3回の講座を設けています。参加者の最年長は88歳。タブレットやスマホが使えれば、なかなか会えない孫ともテレビ電話ができ、ネットショッピングやオンライン診療もできます。実は、地方暮らしの高齢者にこそ、デジタル化の支援が大切なんです」

松下さんはこのほかにも、「コロナ禍でも村民を楽しませたい」と野外でのドライブインシアターを企画したり、ケーブルテレビ放送やオリジナル新聞で地元の特集をしたりと、コーディネート力を発揮して村に元気を与えてきました。

実は、地元である根羽村に愛着のわかない時期もあったという松下さん。「今では、村での暮らしも村役場の仕事もすごく好きになりました」と笑顔を見せます。村のためになることをしようという思いがあれば、実現できる環境も協力し合える人もいる。終始楽しそうに話をしてくれた松下さんの表情が、根羽村で暮らし、働くことの面白さを物語っていました。

最後に、村役場と連携する「民間」の立場にある人にも、話を聞いてみましょう。

根羽村役場から車で10分ほどの場所にある「森の駅 ネバーランド」から、さらに歩みを進めた山の中へ。緑深い森を開墾したこの地で「山地酪農」に取り組んでいるのが、酪農家の幸山明良さんです。山地酪農とは、乳牛を山で放牧する酪農のスタイル。給餌や糞尿処理に手間がかからず、牛が草を食べてくれることで山林の維持にも貢献できます。

熊本県で山地酪農を始めたものの、熊本地震によって牧場が被災し、新天地を探していたという幸山さん。

「土地探しから根羽村役場にサポートしてもらい、村有林を借りることができました。自治体支援のもとで山地酪農が実現するのは、全国初。ちょうど村内で残り1軒の酪農が途切れるかもしれないタイミングで、地元産の乳製品を作り続けてほしいと村にも望まれていたんです。放牧地にするためには伐採が必要でしたが、開墾資金も村が補助してくれてとても助かりました」

これまで、「酪農家は乳を絞って乳製品に加工するしか道がないと思っていた」という幸山さん。根羽村に来てからは、型にはまらず多様な試みに携わっています。

「子どもたちと森での学び場をつくったり、出張ワークショップの講師として学校の授業に呼ばれたり。今年3月には、中学生と一緒に手作りしたツリーデッキが完成しました」

内閣府主催のSDGsコンテストで生徒が考案した『森のテーマパーク構想』が、全国の中学で唯一の優秀賞を受賞。この構想を実現するため、牧場のある山にデッキを設置することになったのだとか。村役場や森林組合の協力のもと、大人たちが一丸となって子どもの「やりたい」を叶えているのが素敵です。

「昔は、公務員にあまり良いイメージがありませんでした。でも、この村に来てからは、仕事も暮らしも行政にサポートしてもらえることが多く、ありがたさを感じています。小さな村なので、役場職員の方々とは業務外でも日常的に顔を合わせますし、家族のような信頼関係がありますね」

枠を飛び超え、人と人、人とコトをつなぐ。都会の行政機関では味わえない醍醐味が、根羽村にはあります。

公務員の仕事は「堅い」「安定」というイメージを持たれがち。しかし、根羽村役場の職員にはそれよりも「変化」という言葉がしっくりきます。現在、役場職員は約25人。けして大きくない組織だからこそ、1人の動きがもたらす影響は大きく、自分が起こした「変化」を間近で感じられるでしょう。

根羽村の人たちと出会って感じたのは、小さな村でも“無関心さ”や“あきらめムード”が全く漂っていないということ。一人ひとりが村に対するプライドを持ち、前向きな空気に満ちています。

そういえば、取材のなかで杉山さんがこんな言葉を残していました。

「ここには、高度なテクノロジーや目新しいものはない。でも、長い時間をかけて熟成された文化や誇りがあります」

根羽村には、“磨けば光る資源”がいくつも眠っています。地元の人たちも、その価値を再認識し始めています。村内外のプレイヤーと村役場が力を合わせれば、村はさらに豊かさになる。そしてきっと、また新たな誇りが生まれるのだろうと、楽しみです。

(取材:2021/11/15 齊藤美幸)

根羽村役場
募集職種 一般事務(社会人経験者)
契約形態 正規職員
給与 根羽村給与条例に基づく
<初任給 給与例>
高卒  150,600円
大卒  182,200円
<一般企業10年経験者 給与例>
高卒  195,500円
大卒  229,500円

※都会と根羽村のような山村では、物価に大きな開きがあります。住居費・生活費も安く抑えられるため、給与も比例して見合う金額に設定されています。

待遇・福利厚生 諸手当
賞与手当、扶養手当、通勤手当、住宅手当、寒冷地手当(冬季)
仕事内容 ・役場内のいずれかの課に配属後、事務業務を担当
・村の暮らしごこちを高め、村民が豊かに暮らすための支援
・企業・自治体と協力しながらの村づくり
勤務地 根羽村役場(長野県下伊那郡根羽村2131-1)
勤務時間 8:30〜17:15(休憩うち60分)
休日休暇 土日、祝日、年末年始、年次有給休暇
応募資格 学校教育法に定める高等学校・短期大学・大学を卒業後、社会人経験をした昭和56年4月2日~平成8年4月1日に生まれた方(概ね25歳から40歳)
求める人物像 ・公務員としての意識を持って業務に取り組める方
・村民とのコミュニケーションを大切にしながら、村のためにできることを考えられる方
募集期間 12月7日~12月22日まで
採用予定人数 若干名
選考プロセス 下記「問い合わせ・応募する」ボタンよりエントリー

受験申込書を根羽村役場総務課へ提出

面接(応募人数によっては、面接前に作文等での採用試験を実施)

採用(2022年4月1日からの勤務、もしくは即日勤務も応相談)

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。



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