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2018-11-26

新しいはたらき方、生き方、つながり方を広げる |NPO法人G-net 代表 南田修司


NPO法人G-net 代表 南田修司

2018年は「兼業元年」ともいわれています。

ひとつの職業、ひとつの職場に従事するだけでなく、仕事としてあるいはプロボノとして複数の役目を持つ。そんなはたらき方が珍しくなく、兼業にチャレンジできる場も徐々に増えつつあります。

そんな中で、岐阜県のNPO法人G-netは、兼業マッチングサイト「ふるさと兼業」のオープン、11月18日には東海圏初となる複業企業展「新しい働き方会議」の開催など、兼業、副業、パラレルキャリアを後押しする取り組みを進めています。

今、どんな働き方、どんな雇用形態が模索されているのか。多様なはたらき方を応援する裏側にはどんな想いがあるのか。G-net代表の南田修司さんにお話を聞きました。

「地元に関わりたい」という想いを生かす。

-兼業、副業、パラレルキャリアなど新しいはたらき方を推進しているのはなぜですか?

南田 まず、地方にも、企業にもどう考えても人が足りていない状況があります。「若い人材に活躍してもらいたい」と思っていても、なかなか出会えない中小企業や地方自治体がたくさんある。もちろん、人材がまったくいない訳ではありません。正社員、フルタイムの雇用にこだわらなければ、挑戦や活躍の機会を求めている人材はたくさんいます。

例えば、そもそもダメなんだけど、「理系で男性が良いんだけど、採れないんだよね。」と話す企業の方も実際に存在する地域の中で、「育児や介護との両立が必要であれば、パートタイムあるいはリモートや在宅での勤務希望の方も対応します。」と柔軟に雇用を考える企業がいたら、実は埋もれている知識も経験も熱意もある人材と出会えるチャンスがグッと広がると思うんです。

人口が減っていくことがわかっている中、地域や社会全体が多様な人材を活かすという方向に舵をきらないと、本来あった可能性でさえどんどん失われてしまう。それはもったいないなと思うんです。

こう思い始めたきっかけは、4年前。東京で20代のある女性との出会いでした。

「Uターン就職で地元に関わる仕事がしたい。けれど、調べてみてもどんな仕事があるのか分からない。地元でどんな人が活躍していて、どんなことができるのか見えない。東京での仕事に不満があるわけでもなく、一歩踏み出すきっかけがないままに3年が過ぎている。」と悩みを話してくれました。

G-netは大学生の長期インターンシップのコーディネートを主たる事業のひとつとしてきました。そこで週3日程度、6ヶ月のプログラムで大学生も企業も変化し成長していく姿をたくさん見てきました。で、その話を聴いたときに、ふと思ったんです。

「社会人経験のない大学生でもできるなら、社会人にだってこうした機会があって良いんじゃないか。地方でがんばりたいと燻っている想いを生かせる場をつくれば、人も地方ももっと多様な成長を遂げられるんじゃない。」そう思い、社会人のインターンシッププログラムを始めてみたのがきっかけでした。

G-net代表南田修司さん

企業にも人にも成長のチャンスとなる社会人インターンシップ

-「社会人のインターンシップ」とは、どんなカタチで行われるのでしょう?

南田 「新規事業をスタートさせたい。でも、人手が足りない」という悩みを抱える中小企業は少なくありません。そうした場合、必ずしもフルタイムでなくても、事業のスタートにあたって企画、市場調査、PRなどを手伝ってくれる専門性のある人を必要としているケースも多い。

そこで、企業が進めたいプロジェクトに対し、専門性や経験を持った社会人が「プロボノ」として参加する「シェアプロ」という事業を始めました。

例えば、事業の情報発信に力を入れたいと思っている企業に、大手の広報担当者が入ってPRのアイデアを考えたり、プレスリリースの作成をフォローしたり、またマーケティング経験のある社会人が販売戦略作りをサポートしたり、などがあります。

3ヶ月という限られた期間で実施するプログラムですが、短期間でも事業が動き出し、メディアから注目されるような事例もいくつかあります。

社会人インターンシップを受け入れる企業にとっては、外の人材の知恵や経験を取り入れることで、自社にはなかったやり方で事業を加速させられる。大企業など自社にない考え方を学ぶ機会にもなります。そして、参加する社会人にとっては、手触り感のある地域の経営者と共に、スピード感のある事業展開を経験できます。

ひとりひとりに任せられる仕事の幅も広く、提案がすぐに形になっていく仕事を通して力を磨けるのです。普段、大きな組織に勤めている人ほど、中小企業での働き方の違いから得る気づきも多いでしょう。大企業と中小企業、どちらが良いという話ではなく、性質の異なるものが混ざり合うことでお互いの成長につながっています。

 実際に参加した企業さんへのインタビュー:https://smartjoin.style/sjs-20180416/

とはいえ、社会的にはまだまだこうした土壌が整いきっていないのが現状です。社会人インターンシップは、ややもすれば企業にとっては「隙間時間を利用した低コストな人材を活用できるチャンス」、参加者にとっては「他社のフィールドをつかって自分をステップアップさせられるチャンス」と、自分本位の発想で行われるものにもなりかねません。

どちらにも求めるものがあるのは当然です。ただ、相手への配慮なく利益だけを追求しては、いいパフォーマンスは生まれません。だから、両者をつなぐコーディネーターの役割は重要だと思っています。

柔軟なつながりが企業の可能性を広げていく

-これからのはたらき方はどう変わっていくと思いますか?

南田 雇用の形態が柔軟になって、企業にもはたらく人にも選択肢が増えたらと考えています。正規の社員として雇う、雇われるという関係だけでなく、企業を後押しするサポーターのような関わり方があってもいい。社員は十数人でも、事業を応援してくれる人は数百人いるというのも面白いじゃないですか。

人材確保の観点からも、社員としての雇用にこだわらないことで、企業の可能性は広がると思います。そうした関係性づくりのきっかけとして、地域の垣根を超えた出会いを全国で生み出せればと開設したのが、兼業マッチングサイト「ふるさと兼業」です。

ふるさと兼業

想いを持って挑戦する魅力ある地域の企業と、熱意ある人が出会うためのプラットフォームとして、日本中の人に利用してもらえればと思っています。

地方の人材不足の解決策として、「都会から地方へ人を動かす」という発想で考えがちですが、「地方に拠点をおきながら都会の仕事をする」という発想で都会と地方両方で人材を生かすのもありでしょう。地域や企業間での人の取り合いではなく、フレキシブルな人と人とのつながりがどんどん生まれて欲しいです。

ひとりひとりの社会人も受入側となる地域の企業も、それぞれがどんな環境であっても多様な形で挑戦できる時代が、これから生まれてくるのではと感じています。11月18日に開催した兼業・プロボノのマッチング企業展「新しい働き方会議」では、実に100人近くの参加者が集まりました。

新しい働き方会議

しかも、多くの方が具体的に兼業できるフィールドを探していると申込段階でチェックを付けられていたんです。実際に、イベント後1週間で12のプロジェクトに60件のエントリーが寄せられています。参画できるフィールドがまだまだ少ないですが、着実に挑戦したい人は増えてきています。

僕ら地域側は、こうした変化に柔軟に対応していくことで、お互いにとって価値のある繋がり作りができると考えています。また、そうは言っても、経験のない働き方や受入が不安という方も少なくないので、間にたってつなぎ役となってフォローしていけると良いなとも思っています。

2018年から19年の年末年始頃には、社会人版インターンシップ「シェアプロ」の第4期の募集を実施予定です。また、ふるさと兼業に掲載する企業も年内に10社近く増える見込みです。より多くの人に、多様な挑戦機会を届けていけるようにしていきたいので、ぜひこれを見た方にも挑戦していただけると嬉しいです。

(2018/11/29 小林優太)