はたらく課推薦図書 第17回 じぶんの軸を見失いそうなときに
この本を購入したのは、直接ご本人の口からお話を伺ったのがきっかけです。
2014年、奈良県立図書情報館で行なわれていた「シゴトヒト3dayⅢ シゴトとヒトの間にあるものを考える3日間」というトークイベントで松場さんのお話を伺ったのですが、短時間で胸を打つことばを立て続けに出される様子や、本のタイトル通り地に足のついた自分のことばでお話される様子に衝撃を受け、胸が熱くなった状態のまま会場ですぐに手にしたのを覚えています。
とはいえ買ったことに満足してしまい目を通していなかったのですが、今年の3月に「北欧、暮らしの道具店」というネットショップで松場さんのインタビューを拝見して同じように感動し、またあのことばに触れたいと読み始めることにしました。読み進めるたびに、2年前に松場さんがお話された姿が浮かんでくるようでした。
この本の中では、アパレルブランド「群言堂」を全国へ展開する「石見銀山生活文化研究所」の所長である松場登美さんが島根県大森町に根をおろした当時のこと、商売をはじめたきっかけ、転機、衣料品ブランドの立ち上げ、「阿部家」という築220年の武家屋敷を修復し、活用していく中で起こった出来事が綴られています。『世の中が捨てたものを拾おう』というスタイルは、バブルより前から貫き通してきたそうで、当時は周囲から反対されることも多かったそうです。そんな中でどのように知恵を働かせてきたのか、うまくいかないことややむを得ないことをどう受け止めてきたのか。一言一言がずしりと胸に響きます。
他人に何と思われようとも自分の夢を形にしていく姿、売れる売れないで判断せず世界観や空気感を明確にしてものづくりをする姿に、自分の気持ちや考えを大事にしようと勇気をもらいます。他人の目を気にして不安になったときやじぶんの軸を見失いそうなとき、手にとりたい本です。