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2017-02-21

フェアトレードを仕事にするまで~スローコーヒー 小澤陽祐さん~【ポットラック・スクール2016参加レポート】


SlowCoffee 小澤陽祐さん

名古屋の港まちで開催されている、これからの「まち」についてみんなで考えるスクール「POTLUCK SCHOOL (ポットラック・スクール)」。2017年1月13日(金)に開催されたテーマは「美味しいコーヒーを届ける社会起業家-環境と文化をつなぐ焙煎屋の仕事」、ゲストは有限会社スロー代表取締役の小澤陽祐さん。

ほしい未来をつくるためのヒントを共有するウェブマガジン「greenz.jp」さんで、小澤さんの記事を読んだことがあり、直接お話を聞いてみたいと思い参加してきました。

プロフィール
小澤陽祐 / Yosuke Ozawa
1976年松戸市生まれ。有限会社スロー代表取締役、コーヒー焙煎技師。ナマケモノ倶楽部共同代表。99年よりスロームーブメントに関わる。2000年7月、スロービジネス第1号として、20代でスロー社を設立。紆余曲折を経ながらも、【オーガニック】【フェアトレード】のコーヒー豆のみを【自社焙煎】することに特化し、着々と卸先・顧客をふやしている。

会場は、名古屋の港まちでまちづくりをしている港まちづくり協議会さんが運営する「Minatomachi POTLUCK BUILDING」。地下鉄名港線「築地口駅」2番出口より徒歩1分でいける場所にあります。

最初に、港まちづくり協議会の古橋さんより、イベントの趣旨について説明がありました。

ポットラックは、持ち寄りの料理や料理を集めてパーティーをするなどの意味あります。北欧ではよく使われている言葉で、皆でいろんなものを持ちよる楽しい場がつくられています。

それにちなんで、まちづくりをしていくとき、このビルに皆さんが持っている課題、考えていることやアイデアなどを持ち寄って、楽しい雰囲気の中で、いまあるものを活かしながらまちが楽しくなる事例をつくっていくことで、そこに集まってくる人たちもまた、いろいろなまちづくりの展開が起きたら面白いと考えながらこのビルを運営しています。その中で、POTLUCK SCHOOLプロジェクトを年に9回ぐらい開催しています。

2005年に開催された愛知万博プロジェクトに関わっていた古橋さん。その時に、小澤さんと一緒にトークショーに登壇して以来約11年ぶりの再会というエピソードの紹介もあり、物理的な距離感に関係なくずっと繋がっていられる関係性は素敵ですね。

SlowCoffee 小澤陽祐さん

SlowCoffeeを立ち上げた経緯

世界各地のフェアトレードかつオーガニックなコーヒーを自家焙煎・販売する有限会社スローは、2000年に千葉県松戸市で創業。2017年3月には、小澤さんの奥さんの出身地でもある岐阜県郡上市にも拠点を構えます。

事業を運営している目的を、小澤さんは語ります。

フェアトレードは、イギリスで70年代にはじまりました。今では身近なスーパーに行っても、フェアトレードのものが購入できます。日本も同じような状況になったらいいいなと。もちろん、フェアトレードのものを選ぶか選ばないかの選択は自由。まだ、選べない状況にあるので、フェアトレードコーヒーを選択する1つとして、提案できたらいいなというおもいで事業をしています。

会社を立ち上げる前は、ソーシャルなことや環境にも熱心ではなく、ブラックコーヒーも飲めない、ヒップホップが好きなどこにでもいる若者だった小澤さんが、なぜフェアトレードコーヒーを自家焙煎・販売する会社を立ち上げたのだろうか。そこには、ナマケモノ倶楽部というNGOの存在がありました。

2000年前半に、スローライフを提案するNGOナマケモノ倶楽部が注目をあびました。動物のナマケモノは、人間が「なまけもの」と名付けるぐらい動きがスローです。

何もしない動物だと馬鹿にされてきましたが、最近の研究で、彼らはエネルギーを使っていないだけということがわかってきました。葉っぱを食べて、木から降りて糞をする。その時に、葉っぱからいただいた半分の栄養を、木にお返しするという、実は素敵な動物。彼らに生き方を見習おうというのがコンセプト。

小澤さんはナマケモノ倶楽部のイベントに参加して、「大量生産、大量消費、大量廃棄している社会。これを続けている人間の未来は明るのだろうか?」という問いに出会います。環境のことは考えていなかったが、毎日満員電車に乗って、行きだけで自分のエネルギーを半分ぐらい使う。なぜこんなことをしているのだろうという違和感は、自分の中にあったそう。さらに話は進んで、会社を立ち上げるので誰かやりませんか?という展開に。

ナマケモノ倶楽部には、3人の立ち上げメンバーがいます。その中の1人辻さんは、大学で環境のことを教えていても卒業後は皆、企業に就職して学んだことを忘れていってしまうというジレンマをずっと抱えていました。それなら、他の1名がオーガニック、フェアトレードをやっていて、その関東拠点みたいな感じで会社をつくる計画があるから、その会社を若者に運営してもらおうと。それで、会社やりたい人いない?と質問を投げかけられました。

なんだこのうさんくさい話、絶対宗教だと最初は思いました。一方で、大学卒業して2年間フリーターをして、大学卒業したら就職するというレールからおりたはいいけど、やりたいことはない。そのやりたいことはいつ見つかるのかという葛藤もありました。さんざん悩んでやると決め、若者3人で会社をはじめることになりました。

SlowCoffee 小澤陽祐さん

未経験の中で事業を進めていくことの難しさ

会社を立ち上げたもののコーヒーや事業運営などすべてが未経験だっこと、ナマケモノ倶楽部がバックアップしてくれていたので、会社の中での責任の所在が不明確でフワフワしていたこと、「フェアトレード」の認知なかったこと、「オーガニック」の評価が低かったことなどもあり、事業が軌道に乗らなかった。そのため給料が出せず、立ち上げメンバーのうち1人は一年ぐらいで辞めてしまったそう。

自営業は、自分で営業しないと売上は増えていかないと痛感しました。その前に、そもそもコーヒーが美味しくなければ、広がるわけがない。僕らがはじめた時には、10社10団体ぐらいのフェアトレード、オーガニックコーヒーがありましたが、どれもおいしくありませんでした。それで焙煎に力を入れました。

オーガニック、フェアトレードという言葉を誰も知らないなら、いろんな場所に出て行って知ってもらうしかないと思い、イベントや展示会への出展を数多くやりました。なるべく伝わりやすい言葉で伝えること、楽しくやることを大事にしました。

コーヒー屋さんはたくさんあるので、アパレルブランドとコラボするなど他の会社さんがやらないこともやってきました。

それでも、2006年末に、もうひとり焙煎を担当していたメンバーも辞めてしまい、1人になってしまいました。どうしようかと思いましたが、辞めようとは思いませんでした。

SlowCoffee 小澤陽祐さん

僕らがやってきたことは、間違いじゃなかったのかなと再確認

焙煎技術の向上、イベントや展示会への出展、アパレルブランドとのコラボなどの自社努力に加えて、「オーガニック」が付加価値として浸透してきたこと、「フェアトレード」の認知が広がってきたこともあり、事業も軌道に乗り出した。

しかし、2011年におきた東日本大震災。千葉県松戸市も計画停電エリア内で、電気で動いている焙煎機が使えず、大事な仕事である焙煎ができない状態に。

会社を立ち上げてから11年経っていて、オーガニック、フォアトレードも広まってきていて、会社をもこそこ軌道に乗りつつあったので、いいことしている気分でした。でも電気が停められただけで、何もできない。こんなにもろいことを僕はやっていたのかと、うちのめされました。

そんな時、スタジオジブリさんが「スタジオジブリは原発ぬきの電気で映画をつくりたい」と社屋に掲げたのを見て、すっかりシビレてしまい、僕も「スローコーヒーは原発ぬきの電気でコーヒーをつくりたい」と思いました。

それで、greenzさんと一緒にソーラー発電などオフグリッドの活動をしている藤野電力さんが開催している、ソーラーパネルを組み立てるワークショップに参加しました。3時間ぐらいで、ソーラーパネルがつくれて、携帯やノートPCは動きます。

僕たちの焙煎機を調べてみたら、400Wしか使っていませんでした。パネル8枚あれば電力がまかなえる。あとはバッテリーがあればできると思い、ソーラー焙煎プロジェクトを立ち上げました。

たくさんの方に参加してもらえるプロジェクトにしたかったのでクラウドファンディングを利用しました。目標金額110万円でしたが、現金で手渡ししてくれた方もいたので最終的に150万円程集まり、250人の方から応援していただきました。

自分のエゴかと思ったら、250人もの方がいいじゃんって、コメント付きでお金をくださるんで、すごい嬉しかったです。僕らがやってきたことは、間違いじゃなかったのかなと。

何事もいきなりは変わらない。目の前にある壁に向き合い、1つずつ丁寧に超えていき、外部環境のせいにするのではなく、大事な部分は残しながら自から率先して変化し続ける姿勢が大事。他の方のお話を聞くことで、気づけること・学べることはたくさんあります。

次回のPOTLUCK SCHOOL (ポットラック・スクール)は、3月17日(金) に開催。テーマは、「つながりの場づくりからコミュニティを考える-“みんなの畑”から生まれるもの-」(ゲスト:若尾健太郎さん<株式会社ユニココ代表取締役>)です。参加してみてはいかがでしょうか。