バーベキュー、酒蔵見学、湖のほとりでゆったり。全身で味わうしもやまの自然と人の営み【しもやま里山ホームステイ2016】
雲ひとつない青空。空高くまっすぐに伸びた杉も気持ち良さそう。
12月3日(土)〜4日(日)、冬支度を始めたしもやまで、昨年に続き2回目の「しもやま里山ホームステイ」が開催されました。
今回のホームステイ先は5軒。(→詳しくはこちらから)
ホームステイしたのは、20~40代の男女3名と、1歳半のお子さんとお母さん、1歳と4歳のお子さんとお父さんの2家族でした。
星野家には猪多さん(女性)
近藤家には山本さん家族(お母さんと1歳半のお子さん)
成瀬家には石黒さん(男性)
木下家には佐藤さん(女性)
中根家には堀田さん家族(お父さんと1歳と4歳のお子さん)
がお邪魔することになりました。
今年は、ピンクの山茶花が迎えてくれる炭焼き窯「七つ蔵の窯」でのバーベキューからスタート。
手の届くところから食材が次々と姿を現すバーベキュー
しもやまで獲れたジビエ。しもやま産の野菜。
あったかいほうじ茶は、ついさっき林から獲ってきた枝を炭火で炙り、天然水の沸いたヤカンに放り込んだもの。
敷地内の原木から収穫したばかりのしいたけ。炭火で炙って醤油をたらせば、香りも味も最高です。同じく、敷地内で獲ってきたなめこは、そのままシシ鍋の中へ。
手の届くところから食材が次々と姿を現す。
そんな環境に、みんな驚きと感動が絶えません。
「おいしい食材は、気づけば暮らしの身近にあるもの」だと気づかされます。
こちらでは、野菜をトントンと切り。
あちらでは、炭火を起こし。
火を起こしたら、大きな鍋でシシ鍋を煮込んだり、お肉を焼いたり。
みんなで一緒にバーベキューの準備をしました。
普段は料理しないという男性たちも、ワイルドな料理に夢中です。
ちなみに、バーベキューで使われた炭は、しもやまの炭焼き職人 高木田さんの炭。なんと高木田さんの炭は臭いがしないんです。
キロ700円くらいの一般的な炭は、火を起こすと特有の臭いが漂います。でも、高木田さんが丹精込めた炭は一味違う。
「普通の炭は、ほとんどが輸入品だから、検疫で消毒を何度もしていて臭いがする。からだにも良いとは言えない。この炭はしもやまの山で採れた木をじっくりと焼いているから、臭いもほぼしないし安心だ」。
海外でも炭焼きを教える高木田さんの炭と、プロの仕事にまつわるお話も、ホームステイだからこそ出会えるもののひとつです。
バーベキュー会場には、11月に開催したしもやまの紹介イベント「しもやまナイト」で大人気だった「しょうちゃんの惣菜シリーズ」もズラリ。
絶品の「生姜と椎茸の佃煮」を焼いたお肉や野菜に乗せるとさらなる美味に。しもやまで獲れて、作られたものばかりの地産地消の贅沢を堪能させていただきました。
しもやまの酒蔵「柴田酒造場」見学
バーベキューの後は、しもやまの酒蔵「柴田酒造場」の見学へ。
柴田酒造場は、昨年のホームステイ先でもありました。
地元からの参加者の方々も、はじめて入る方がほとんど。
いつも愛飲している地酒が丹精込めて作られていると知り、改めてファンになった人も多かったようです。
酒瓶を抱えた人がたくさんいる集合写真。なかなかない絵ですね。
しもやま里山ホームステイへの参加をきっかけに就職・移住
この柴田酒造場には、昨年のしもやま里山ホームステイへの参加をきっかけに、就職、移住したHさんがいらっしゃいます。ホームステイから一年、今では酒造りにはげむHさんも、仕事の合間に顔を出して、生活の変化を振り返ってくれました。
移住を決心したのは、しもやまの人柄に惹かれたから。温かくて芯のある人たちと、しもやまの自然が好きになったといいます。
そんな彼女がはじめて手がけたお酒が世に出る。ホームステイから始まったHさんの物語に、私たちも感動を抑えられませんでした。
しもやまを代表する名所「三河湖」
柴田酒造場をあとにしたら、次はしもやまを代表する名所「三河湖」へお散歩に。傾きはじめた日差しが木々の隙間から、参加者さんたちを照らしていました。季節によって顔を変える三河湖の話を聞きながら、のんびり過ぎていく時間を堪能しました。
地元の人にとっては、身近すぎてあまり足を運ぶ機会のない場所なんだとか。参加者さんの楽しそうな姿に、地元の宝を再発見できたようです。
それぞれのホームステイ先へ。しもやまの人たちと過ごした素敵な時間
星野家は、美味しい天然水を汲みに行き、一緒に夕飯の支度を。お母さん手作りの梅ジャムとりんごジャムを使ったオードブル。ジャムの作り方も教わりました。おでんの準備も。
お父さんが育てた「おでん大根」をトロトロに煮込みます。おでんができるまで、オードブルとジャスミンティでおしゃべりを楽しみました。
ゲストの猪多さんはまちづくりに興味がある方。しもやまの困り事、星野さんや町内のくらし方、野菜の作り方など、たくさんの質問が出ます。お父さんが丁寧に言葉を選びながら話し、となりでお母さんが笑顔で見守る様子は、まるで親子の団欒の様でした。
成瀬家では、同級生のような三人組で、そば打ちと地酒を満喫。そば打ち会場は、近所の居酒屋さん。普段から、さまざまな体験講座や朝市、廃車になったバスを買って図書館にするなどしている素敵なお店です。成瀬さんはいつもここでそば打ちを教えたり、教わったりしているそうです。成瀬さんの手ほどきを受けながら、みんなでそばを打ちました。
お店の大将に茹でていただき、柴田酒造場さんの日本酒と一緒に味わいました。太さも長さもバラバラのなかなか個性的なそば。大将が丁寧に茹でてくださり、おいしいそばつゆでいただきました。日本酒もいい感じにすすみ、気がつくと一升瓶が空になっていたのだとか。
木下家では、木下さんが地域の方に声をかけて、賑やかな歓迎会を拓いてくださいました。食事は、地元の方が獲ったジビエのオードブルフルコース。地元の人もめったに食べられないらしく、「え?これ鹿肉なの?猪肉なの?おいしい!」と歓声が上がります。
名古屋から”しもやま”まで自転車で来たという佐藤さんにみなさん感激。「いい人が来てくれた!」と大喜びでした。ホームステイしにきた自分のために、たくさんの方が集まり、笑顔でもてなしてくれる。そんな皆さんのあたたかさに、ゲストも感動していました。すっかり打ち解けて「今度なんか一緒にやろう!」と盛り上がりました。
近藤家は、まずはこたつでのんびり。居間で近藤さんが座っていると、1歳半のNちゃんがちょこんと膝の上に。いつもは人見知りだといいますが、初めて会ったとは思えないほどリラックスしてなついていました。近藤さんも「孫が出来たよう。こんな嬉しくて感動したのは初めてだ」と大喜び。一息ついた後は、こんにゃくづくり。こんにゃく芋を擦り、炭酸と混ぜて、冷やします。できあがりは明日のお楽しみ。
その後は、一緒に夕食をつくって、ゆっくりと晩酌をご一緒しました。近藤さんは、柴田酒造場さんの「孝の司」の熱燗に昆布を入れて飲むのがお決まり。夏も冬も燗がいいのだとか。金婚式を迎えたおじいちゃんとおばあちゃんの馴れ初めからはじまり、地域の話など、夜遅くまで話に花が咲きました。
中根家は、ホストファミリーの子どもが3人、ゲストファミリーの子どもが2人。KちゃんとRちゃんは年も近く、会った瞬間からすっかり意気統合して走り回っていました。おにいちゃんに教えてもらってテレビゲームをしたり、おもちゃで遊んだり、こたつに入ってみかんを食べたり。親戚の家に遊びに来たようで、すっかりくつろいでいます。
食卓では、中根さんのお母さんが作ってくれた湯豆腐や、近所のおじいちゃんが作ってくれた土手煮に舌鼓。お父さんたちは晩酌をしながら語り合い。夜が更けていきました。
一泊して、ひんやりとした朝を迎えました
星野家の朝食は、お父さん手作りの赤い大根のおろしと、自家製米、八丁味噌のお味噌汁、納豆。日本人でよかった。この日は、お宮の掃除当番の日。家からすぐそこに見える山のお宮へ。掃除に来ていた、町内の人たちともおしゃべりできました。「掃除をすると自分の気持ちもきれいになるね」の言葉に心から共感できる清々しい朝を迎えたようです。
成瀬家の朝は、お父さんと一緒に、近所の山に仕掛けたイノシシの檻の巡回へ。実はお父さんは、全国各地から先生として呼ばれるほどの、檻を仕掛ける名人。山を歩きながら、獣害の実態、シカやイノシシの習性などを教えていただきました。道や草の状態を見て、「これを昨夜にイノシシが通った跡だ」と見分けるお父さん。檻にイノシシはかかっていませんでしたが、獣害対策の大変さと大切さ、そして成瀬さんのお父さんの凄さを感じられました。
木下家は、早朝からサイクリングへ。この日は珍しく霧がかった三河湖。幻想的な景色が見られました。湖のほとりで、おにぎりとシシ汁の朝ごはんを楽しみました。その後は、ご近所の田んぼでトラクターを体験。体験後には、来年の5月には、田植えを手伝い、土手でおにぎりとみそ汁をほおばり、山水でいれたコーヒーを飲む。そんな次の約束もできました。
近藤家では、ゆったりまったりのお散歩とドライブ。星野家のある集落のお宮へ掃除を見に行ったり、柴田酒造場さんへ行ったり、へぼ(蜂の子)を育てているへぼマンション(!?)を見に行ったり。はじめて目にする「しもやまの常識」にびっくりの連続!いやぁ、まだまだ知らないことはたくさんあります。
散歩中、洗濯物を干している近所のおばあちゃんとも仲良くなりました。人との距離の近さも、しもやまの魅力ですね。お昼はつきたてのお餅と昨晩つくったこんにゃくのお刺身。お餅はきなこや大根おろしでおいしくいただきました。
中根家は、朝食後、家の裏のゲートボール場で外遊び。中根さんの中学生のお兄ちゃんは、堀田さんとキャッチボール。KちゃんとRちゃんは相変わらず一緒に走り回っています。その後、昨年のゲストファミリーの小原さんにつないでいただき、隣の集落 平瀬の新嘗祭にお邪魔しました。みんなでお宮を掃除して、お供え物をして、「さんま」を食べて。地元に暮らす方だけではなくて、外に住んでいる子ども家族も参加。たくさんの地域の方と交流できました。
しもやまで見つけられた大切なもの
各ホームステイ先で昼食をとった後は、全員が集まってふりかえり会をしました。2日間の写真を見ながら、それぞれのホームステイ先での出来事を共有。
その後、参加者さんとしもやまの人たちとで、お互いに思い出やメッセージをハガキに記しました。ハガキは後日、ありがとうの気持ちをのせて、それぞれのもとに届けられます。
自分らしい生き方が出来る場所。
居心地のよい場所。
肩の力を抜いて暮らせる場所。
そして、地域の一員となって
その場所を一緒に守れる人が住む場所。
特別なことは無くて、難しいこともなくて、住んでいるうちに全てが当たり前になっていく。ふりかえると、それは素敵なくらし方なんだと気づく。
今回のホームステイで感じたことは、自分のくらしに求めることと同じように、人それぞれだと思います。
それでも共通しているのは、
「里山のくらしっていいな」。
「通える里山でのくらしも選択肢に入れておきたい」。
「また、帰ってきたい」。
そんな思いだと感じました。
ふりかえり会で感想を発言した時、別れ際にご挨拶をした時、思わず感謝と熱い気持ちがこみ上げてきて、目頭が熱くなりました。一泊だけのホームステイで、想像以上の感動が生まれたことに驚いています。
里山での暮らしは、人との距離がとても近い。
誰が何をしているのかすぐに見えるから、気にかけてもらえるし、いつでも声を掛け合うことができる。
助け合いがあたり前にある暮らし。
しもやまのホストたちにとっては、いつもの暮らしや地域のなかにあるものの大切さをあらためて見つける一日に。
しもやまを訪れたゲストにとっては、大切にしたいと思えるものがすぐ身近にあると気づく一日に。
それぞれが自分のくらしに新たな発見のある一日になりました。