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2017-08-28

ローカルメディアと編集力〜【はたらく推薦図書 第32回】~


魔法をかける編集

「編集」と聞くと雑誌やwebメディアの編集をイメージするかもしれません。たくさんの情報が手に入りやすく発信する手段も増えてきた今、求められている力は、情報を編集し届けたい方に伝えていく力ではないでしょうか。

今回のはたらく推薦図書で紹介する本は、『魔法をかける編集』(2017年 インプレス)です。著者の藤本智士さんは、秋田県が発行するのフリーマガジン「のんびり」の編集長なども手掛けています。

著者は、編集力を「メディアを活用して状況を変化させるチカラ」と定義し、このメディアの部分を雑誌や書籍だけと捉えるか、「まち」・「商品」・「お店」なども含め広く捉えるかで編集のフィールドは異なってくると言います。

ローカルメディア

メディアといえば、テレビ、新聞、大きな出版社が発行する雑誌などマスメディアと呼ばれるものを想像する方も多いかもしれません。マスメディアのチカラも以前と比べると万能ではなくなってきています。

小さくても何かを発信したいと想いを持って行動している方にとっては、ローカルメディアが武器になると著者は言います。

ローカル=地方、地方=田舎、すなわち都会でない日本の地方で作られている、雑誌やら新聞やらウェブやら放送やら、というのが、この言葉に対してみなさんが自然に抱くイメージであり、実際に、そういうことを指す言葉だと思うのですが、たとえば「東京ローカル」なんて言葉もあるように、ローカルを「局所」と捉えれば、僕にとって究極のローカルメディアは自分自身であり、あたなです。

ビジョンと謙虚さ

メディア(媒体)の使命は「伝える」ことであくまで手段。メディアを活用して何を伝えるかが大事。

多くのイベントやプロジェクトは、つくることが目的になっていて予算がなくなったら終わるなど、一過性のものは少なくはありません。「作ることよりも、作ったあとに世界がどう変化するかのほうが大切」で、プロジェクトなどが一過性で終わらないようにするためにには、「ビジョン」を「謙虚さ」が必要と著者は言います。

手前の目標ではなく、理想とする未来の強いビジョン。ビジョンは、いくら売り上げるとか、何位になるとか、何人動員するとか、何万回再生されるとかいった、そういう万人が共有しやすい目標とは違います。(中略)編集の魔法は、未来のビジョンの実現にこそ、そのチカラを発揮します。

ビジョンは、数値をいうより、世界そのもののイメージ。そこには常に多種多様な人々の生活の気配が伴います。それゆえ、にビジョンに立ち向かうほど、必然的にそれら一人ひとりの営みについて想像せざるを得ず、それは自然と、自ら描いた理想のビジョンに対して謙虚でいることに繋がります。すなわち、自分はそれを理想とするけれど、すべての人にとってそれが理想であるわけではない、という当たり前の思い。

はたらく課は、「このまち(ナゴヤ)には色々な方がいて、多様な”はたらく”が存在しているまちになって欲しい」というビジョンがあり、インタビューマガジンなどwebを使った情報発信、ハタラクデアイしごとバー@名古屋などのイベント運営などを通じて伝えるメディアなんだと改めて活動を振り返ることができました。

本書には、著者が体験を通じて得たことが、具体的に書かれいます。編集に関わっている方はもちろん、ジビョンを持っている方、ジビョンを持っている方を支えたいと思っている方には、おすすめの一冊です。

タイトル:魔法をかける編集

著書:藤本智士
出版社:株式会社インプレス