「ほしい暮らしは自分でつくる」が、まちを変えていく〜【はたらく推薦図書 第30回】~
「リノベーションと」という言葉は一般的に使われるようになってきています。では、「リフォーム」という言葉と何が違うのかを、明確に説明できないという方も多いのではないでしょうか。
「リフォーム」が「Re-form」、つまりフォーム=形をつくり直すことだとすると、「リノベーション」は「Re-innovation」、イノベーション=新たなアイデアや価値を創造し直す、という意味になります。建物の場合は、既存の建物を活かしながらその価値を新たに創造し直すことがリノベーションになります。
そんなリノベーションという手法を使って、20世紀型の発想でつくるまちや建築ではなく、これからの日本に必要なまちと建物の使い方、そこでの働き方や暮らし方、お金のもらい方を生み出していく「リノベーションまちづくり」という考え方があります。北九州を中心に、全国で「リノベーションスクール」が開催され、まちに変化をもたらしていいます。
今回のはたらく課推薦図書で紹介する本は、『ほしい暮らしは自分でつくる ぼくらのリノベーションまちづくり』(2015年 日経BPマーケティング)。著者が、「リノベーションまちづくり」を実践してきた様々な事例が紹介されています。
まちをリノベーションする
「らいおん建築事務所」という建築事務所をやっている嶋田さん。生まれは北九州市で、今は東京都豊島区の「雑司が谷」で子育てをしながら暮らしています。北九州や豊島区を中心に様々なプロジェクトに取り組み、仕事、暮らし、そしてまちをリノベーションしています。
「発想や見方を変え、すでにある空間を活かす」ーつまりリノベーションは、建築家だけの特別なスキルではないと著書の嶋田さんはいいます。
ぼくは実際に主婦、学生、商店街などさまざまな人たちと一緒に、さまざまなモノ・コトのリノベーションをしてきた。この方法は、あなたの仕事、暮らし、まちにも応用できるとぼくは考えている。
エリアの価値をどうやって高めていくか
都市の住んでいて自分が住む場所を決めるとき、個々の物件情報よりも、最初にどこのエリアに住みたいかを決める人も多いのではないでしょうか。
空き家単体ではなく、エリアの価値を上げていくために、空き家をどのように活用(リノベーション)していくかも大事な視点。
人は不動産を選ぶ時、最初にエリアを選ぶ。エリアの価値が高ければ、不動産の価値も高くなる。だからこそ、エリアの価値をどうやって高めていくか、ということがすごく大事なのだ。
その時に、放置された空き家は明らかにエリアの価値を下げる。それはつまるところ、そのエリアの個々の不動産の価値も下げてしまう。
ほしい暮らしは自分でつくる
リノベーションは、自分が欲しいと思う場所やサービスをつくり出すための手段。自分で考えてつくり出すことは、特別な人がやるものではなく、誰にでもできること。個人的な想いが、まちを動かしていくのではないでしょうか。
今の日本の社会制度は、市民が「自分のほしい暮らし」を実現しやすいようにはなっていない。しかし市民による小さな実践の積み重ねが、大きなものを変える力になるのだ。自分のほしい暮らしは自分でつくる。自分の手と、自分の頭と、自分のお金を使って。リスクを取るからこそリターンもある。
「欲しい暮らしは自分でつくる」が、あなたのまちを変えていく。一人で全部やらなくていい。仲間を見つけよう。自分でリスクを取ろう。みんなが同じ方向をい向ける関係性やプロセスをデザインしよう。
「ほしい暮らしは自分でつくる」と「リノベーションまちづくり」。どちらも相互に関係しています。まちに住み、働き、遊ぶことが暮らしであるならば、それを楽しくすることとまちを楽しくすることはつながっています。
自分が欲しいと思う場所やサービスをつくりたいと思っている方には、お勧めの一冊です。
著書:島田 洋平
出版社:日経BPマーケティング
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