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2018-09-25

モヤモヤすること、わかりにくいことも大事な感覚【はたらく推薦図書 第39回】


具体と抽象

誰にでも伝わる”わかりやすさ”は、大事なこと。

具体的な話はわかりやすい、抽象的な話はわかりにくいと良く言われますが、自分の中でモヤモヤしてまだ言語化できていないことなど、抽象的で概念的なわかりにくい(今は自分の言葉で説明できない)ことも、大事なのではないだろうか。

大ナゴヤ大学には、大学という抽象度の高い言葉が含まれています。わかりやすく伝えることができず、一言で説明する言葉をずっと探しています。考え続けているけれど、今だに一言で説明できません。わかるようでわからないという感覚があるからこそ、続いているような気がしています。

全体としてわかりにくい部分も残しつつ、分かりやすいところから伝える努力をしていく。

大ナゴヤ大学の活動を”授業”という具体的でイメージしやすい場だけ抜き出すとぐっと考えやすくなります。といっても授業もまだ抽象的な言葉なので、”授業=学び合いの場”と定義してみます。

授業を通じて(誰が)何を学ぶのかが大事になり、その学びを引き出すための方法として、ワークショップ、講義、体験、まち歩きなど、様々な手段があります。

今回の授業は何を学ぶ(伝える)場なのかという抽象的な問いを立てて、自分なりの答えを出し、次にそれを実現するための具体的なプログラムを考えていきます。このように抽象と具体を行き来きしながら、企画に落とし込んでいきます。

会社などの組織においても、具体的な個別最適を考えている人と、全体を抽象的に捉え全体最適考えている人とでは、会話が噛み合わないことを経験したことがあるのではないでしょうか?

社長が言っていることが、理解できない場合、もしかしたら自分には見えていない世界を社長には見えていて、それをもとに判断しているなんてことも。(その逆もあるかもしれませんが・・・。)

そんな具体と抽象のこともう少し深く考えようと、「具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ」を読んでみることにしました。

やること(to do)は具体的で見えやすいので考えるのが比較的容易ですが、あるべき姿(to be)は、将来のある時点での状態を表すので、これを考えるためには「想像と創造」のための抽象化能力が必要になります。山登りでいえば、to beは「山に登ってポーズを取っている写真」であり、to doは、道具を整えて、どういうスケジュールでだれと一緒にどの道を登っていくか、という具体的なアクションを表します。

大きな目標があってはじまて個別のアクションが有機的につながり、「個別の無機的な行動」が意義とつながりをもった生きた行動になっていきます。

具体と抽象は、常にセットで全体を見て、それらを連係させた上で計画と実行のバランスをとっていくことが重要だと著者は言います。

抽象的な概念は、あくまで思考結果のイメージであり頭の中にあります。具体的な行動を積み重ねることでしか人の経験値は増えていかないし、抽象的に描いたイメージを目に見える形で具現化していくには、具体的に行動していくしかありません。

「具体と抽象」という概念を改めて学びたい方にとって、おすすめの一冊です。

タイトル:具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ

著書:細谷功
出版社:dZERO